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休日_3優也
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奏介に連絡をしてもらうと、管理人はちょうどマンションにきているというので自分で行くと言い出した愁と3人で向かう事にした。
放火が原因だろうとわかっていて現場を見に行くなんてやめさせたかったが、まだ荷物の残る部屋だし何か必要な物でも思い出したのかもしれない。
ボヤと言っても無人の部屋からの不審火という事でテレビ局の中継車や、野次馬なんかで平日の朝とは思えないくらいの人だかりができている。
巻き込まれない様に裏口から入ろうとして角を曲がると、人だかりから弾き出されるように老婆が転ぶのが見えた。
すぐ後ろにいた愁が弾かれた様に駆け寄って行く。
止める暇もなかった。
「大丈夫ですか?」
「すみませんねぇ。道がわからなくなってしまって。交番はどちらでしょうか?」
柔らかく人当たりの良さそうな笑顔。
自然に笑っている愁はとても30代には見えないくらい幼い。
「ゆうくん、こんな所で立ち止まったらマスコミの餌食だよ。早く中に入って。」
愁に裏口を指しながら先に入ると仕草で伝える奏介に急かされて仕方なく進む。
もう少し見ていたかったんだが…
非常階段を登った所で愁から電話がかかってきた。
交番まで送ってくると。
下を見下ろすとちょうど愁が老婆の荷物を持って歩いている所だった。
のんきだな。
危険なのは自分なのに。
見守るつもりで後ろ姿を眺める。
マンションの角に大木があって視界を阻んでいるが1本道だからすぐに見えるはずだ。
…
…
遅くないか?
そんな疑問を抱いていると、細い路地に車が止まった。
車のナンバーを見た瞬間に俺は階段を駆け下りていた。
三重ナンバー。愁の実家は三重県だ。
「愁!どこだ。」
非常口から飛び出した所で行く手を遮るように車が発車した。
後部座席には俯いた愁らしき人影。
「嘘だろ…おい」
大木まで駆け寄っても人影は見えなかった。
慌てて奏介に連絡をとろうとすると携帯にメールが届いた。
”父親が危篤だそうなので一度実家に帰ります。”
こんなタイミングで現れるなんて明らかに不自然だろうが!!
愁、一体何考えてるんだ。
この期に及んでまた俺は愁を攫われたのか。
あの瞬間に離れるべきじゃなかった。
まさかこんな一瞬で…
自己嫌悪に襲われながら、追いかけようと車のキーを出して奏介に連絡を入れると、案の定すごい勢いで非常口から飛び出してくるのが見えた。
「ちょっと待って、落ち着いて。どこに行ったのかわかるの?実家に真っ直ぐ向かうとは限らないんだよ。俺も一緒に行くから。」
息を切らせながらそう肩を叩かれてハッとする。
今も昔も奏介は頼りになるヤツだ。
俺が慌ててどうするんだ。と。
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