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捕獲_愁7
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血の味を噛み締めながら、重たい口を開く。
言いたくない。
そんな言葉を口にするのは二度と嫌で…
人間でいたくて、だから…
あのままでいたくなかった。
生きる事をあきらめたまま生かされていたくなかった。
でも…
「僕は…」
でも、逃げ出した事に意味なんてなかったかもしれない。
こうしてまた、自ら捕まるような事になるのなら。
離れていた何年かすら無駄だったんだろう。
この男の闇から逃れられないまま…
「…っ」
「僕の気が変わらない内に言えよ。忘れるたのか?再生してやるよ。」
ヒラヒラと動画を再生させながら脇腹をつねられる。
その感覚も、痛みじゃない刺激になって下半身を濡らすだけ。
”ああっ…いくっ”
画面の中の自分の声が鈍く耳の中に反響する。
脳内を掻き回すようにぐるぐると。
せせら笑うようにつねられ続けても何も感じない。
まるで昔に戻ったような光景。
「兄さんの…奴隷、です…」
何が悲しいんだか、涙だけがボロボロと溢れる。
泣きたくなんてないのに。
自業自得なのに。
誤解していたからだ。
自分も人間なのだと。
感情なんて捨てられるはずだった。
気持ちなんていらなかった。
それなのに…
あんな経験。
してはいけなかった。
あんな暖かい気持ちに触れちゃいけなかった。
一瞬だけ見てしまった夢を後悔するだけ。
そんなもの、僕の世界のどこにも有りはしない。
僕の中にもそんなもの、存在しないんだから。
「…淫乱な、体に、ご褒美を、ください」
ため息と供に言い終わると、ニヤリと赤い唇を大きく開く夏彦が見えた。
それを見て、ゆっくりと絶望がのしかかってくる。
「そうだ。オマエは生まれてきた事が間違いなんだよ。それを生かしてやったんだから逆らうべきじゃない。それなのに勝手に家を出るなんてなぁ。」
それを言うのが当たり前の毎日に一瞬で戻ってしまったような口調。
恐ろしいのは、この状況でも下半身から熱が引かずにだらだらと涎が垂れている事だった。
このまま強い刺激を与えられたら確実に意識が飛んでしまうだろう。
スルスルと体を撫で回される感覚に息が上がる。
夏彦の湿った手に触れられたくないのに、もっと強く触れて欲しいと思う。
そのいかれた思考は意識をぼんやりとさせる。
「はっ、はっ、はあっ、はあっ…」
「どうしてほしいか言えよ。ほら、優しくしてやるよ」
ざわざわと撫で回すそのソフトな感覚は嫌がらせをしているとしか思えない。
そしてそれはいつも、教えこまれた卑猥な言葉を口に出すまで終わらない。
「はあっ、あっ、っ…僕の、汚いっ…孔に、…いれて、くだ、さい」
「よく覚えてるじゃん。奴隷はどこにいても奴隷ってことだな」
何を言われても、もうわからないくらいの感覚が襲ってくる。
言葉と一緒に色んな物を捨てられたらいいのに。
一点しまった後悔も、温もりに触れてしまった感覚も、あの優しい眼差しも…
何かを守る為に体を差し出す。
そんなの馬鹿げてる。
分かっているけど、他に方法は思いつかない。
全部。
全部なくさなきゃいけない。
元に戻っただけ。
ただ、それだけの事。
それなのに、後から後から零れる涙で視界がぼやけた。
悲しいなんて、考える事が間違っているのに。
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