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「う、わぁ・・・すっげぇ」
「っ!」
なんとも言えない、嬉しそうな声だった。
あまりに嬉しそうな声だったから、一瞬違う奴の声かと思ったほどだ。
「な、なんだよ。別に、凄くはねーだろ・・・」
速見に続いて弁当を開けながら、内心かなり照れているのを隠した。
弁当を見ただけでそこまで感動するか普通。
「いや凄いよ。オカズ多いし、茶色くねーし・・・めちゃくちゃ美味そう」
「あー、・・・そう、」
その声に嘘とかお世辞とかが入っているようには思えなくて、それがさらに照れる。
速見は割り箸を割って、丁寧に両手を合わせると
「いただきます」
見た目とは裏腹な礼儀正しい態度で合掌した。
「どーぞ、召し上がれ」
それにつられて俺も手を合わせてから弁当に箸を付けた。
生姜焼きと白飯を頬張りながら、チラチラ速見の様子も伺う。
「うっま!すげーなお前、ほんとにお前が作ったんだよな?」
大きな口で唐揚げも卵焼きも一口で食べてしまい、その度に大袈裟なくらい「うまいうまい」と声を上げた。
それが何となく居心地が悪くて、「あっそう」とか「どーも」とか、愛想の悪い返事しかできない。
恥ずかしいけど、もっと言ってほしい。
正直な感想も欲しいけど、お世辞でもおいしいと言ってほしい。
矛盾した思いが胃の辺りでグルグルしているせいで飯の味がわからない。
ーーーこんなの、はじめてだ。
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