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そう言われ顔を上げると、茶化すように笑う速見と目が合った。
「可愛い女を待つのは苦じゃねーよ」
ニッと歯を見せ笑うのに、その頬は寒さのせいで真っ赤になっていて、
可愛いなんて言うくせに、真っ赤になっている速見の方がよっぽど可愛くて、つい、フッと吹き出してしまった。
「・・・ばーか」
「うるせーな」
さっきまであんなに悩んでいたのに、速見を目の前にしたら、もうそんな事は頭から吹っ飛んでいて、どうでも良くなってしまう。
会えない時間にぐちゃぐちゃに悩んで、二人の時間に満たされる。
「・・・俺は、速見ばっかりだな・・・」
「えっ?」
「いや、何でもない」
「帰ろうか」と、速見に向かって手を差し出すと、何故か妙に戸惑ったような顔をされた。
「あ、いや・・・か、帰るか」
心なしか震えている声で、速見は俺の横をすり抜けた。
・・・なんだよアイツ、人がせっかく・・・
「あっ」
そこまで考えて気付く。
俺は今、すごくナチュラルに速見と手を繋ごうとしてしまった。
・・・完全に無意識だった。
かなり恥ずかしい事をしてしまった事を後悔すれば、ジワジワと込み上げる羞恥心に顔が熱くなる。
差し出していた手を、真っ赤になっているであろう額に当てると、先を歩き始めていた速見が、立ち止まって振り返る気配がした。
「行くぞ」
額に当てた指の隙間から速見を見ると、その頬も、さっきより赤くなっている気がした。
きっとそれは、寒さのせいじゃない。
立ち止まっている速見に小走りに近付き、隣に並ぶと、二人一緒に歩き始める。
「・・・」
「・・・」
真っ赤な顔した男二人が、微妙な空気で無言で歩く。
気恥ずかしくて、
むず痒くて、
胸がきゅうきゅう締め付けられる。
・・・なんだっけ、この感じ
寒空の下にいるのに、全身が熱を帯びるようなこの感情に、まだ答えが出なかった。
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