アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
2
-
俺は昔から母さんっ子で、ずっと母さん
にくっついて育った。
美味しい料理を魔法みたいに作ってくれて、いつも笑顔で、優しい母さん。
母さんは俺にとって、尊敬する人だった。
小学校に入学した頃、『将来の夢』という題で作文を書くことになり、みんなは、宇宙飛行士やお花屋さんになりたいと楽しそうに夢を語り、俺も喜々として自分の夢を書いた。
『大好きな母のようなお嫁さんになりたい』
担任の先生は、そんな俺を褒めてくれた。
だけど。
「男の子は、お嫁さんにはなれないのよ?だってあなたは男の子なんだもの」
当たり前だ。みんなが知っている事だった。
だけど俺は、そんな当たり前を知らなかった。
「どうして?じゃあボク、女の子になりたい!」
なんて言ったのが運の尽きだった。
「女になりたいなんて、ヘンなやつ!」「おんな男!」「男はおんなになんてなれないんだぜ!」
ーーーちがう。
ボクはただ、おかあさんみたいな優しい人になりたかったんだ。
いつも笑顔で、優しくて、暖かくて、魔法みたいな料理が作れて、そんな人間になりたかったんだ。
「おんな男!」
「きもちわるい!」
「お前はあたまがおかしい!」
俺は、齢9歳にして、現実を見た。
大好きな人を否定され、夢を壊され、逃げられない痛みを知らされる。
『お嫁さんになりたい』
その一言で、俺は小学校の6年間を惨めに過ごすことになった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
38 / 73