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笑顔で
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寝るかとはいったものの…
正直あんまり眠くない。
俺はとりあえず目を瞑り、寝る体制に入ってみた。
シーンっと静まり返った部屋。
リビングに実哉達がいるとはいえ、心細い。
なんていうか、こういう時って人恋しくなるよね…
思い出したくない記憶とか頭に浮かんでくる。
ほんと最悪だ。
頭の中で色々な事が浮かび上がり、グルグルと渦を巻く。
ズキリと腹部が痛み、思わず手で抑える。
あれ?
俺は痛むお腹の中心に手を当てたつもりだった…
なのに手は脇腹を当てていた。
この位置は確か、両親が殺された時に出来た傷跡がある場所だ。
真っ赤に染まった服やヌルリとした感触、よく覚えている。
布団から手を出して、手を見る。
血なんかついてないのに、その手が血で真っ赤に染まっている様に見えた。
血で真っ赤に染まった部屋。
母さんの悲鳴や無惨に刺され殺され、真っ赤に染まる父さん。
思い出したくないのにその光景が頭から離れない。
視界がボヤケてツーッと涙が流れ、シーツにポタリと落ちる。
一度流れた涙は止まらず、どんどんと溢れ出てくる。
俺は必死に込み上げる嗚咽をこらえる。
涙が止まらない。
もう、誰も失いたくない。
亜「…一人は…嫌だ……」
思わず声が漏れる。
実「亜芦は一人やないで」
亜「…え」
ドア付近に実哉が立っていた。
いつ入ってきたのか全然、わからない。
実哉は俺の近くまで来た。
実「亜芦は一人やないで」
実哉は再びそう言ってニコリと笑い俺の頭を撫でて言ってきた。
亜「…実哉」
実「平気な訳やないよなぁwごめんな、側にいてやれんで」
亜「…ううん」
俺は首を横にふる。
実「亜芦は優しいなぁw」
溢れ出た涙を実哉が拭ってくれる。
実「亜芦、寝れへんのか?」
亜「…うん」
実「せやかて俺もなんやけどな」
実哉がベッドに腰を下ろしながらこたえる。
実「亜芦、京斗のした事ほんまごめんな」
亜「…実哉は悪くないよ」
実「ちゃうねん。半分は俺のせいでもあるんや。京斗はな、俺の従兄弟なんや」
やっぱ、知り合いだったんだ。
実「小さい頃な弟みたいに可愛がっとたんやけど、中学上がってからあいつ変わってしもうたんや」
亜「…うん」
実「俺が彼女作ったりすると邪魔してきたんや。そのやり方がまた…」
実哉はそこで言葉をきった。
亜「…実哉、別に言わなくていいよ。もう、ある程度分かったから」
実「そうか。ほんまにごめんな、亜芦。自分が情けなくてしゃーないわ」
溜息をつきハハッと笑い実哉が言ってくる。
実哉は悪くない。
俺はあえてそれを口にしない。
亜「…もう、いいよ。気にしてない。だから、実哉も無理して笑わないで」
実「亜芦には敵わんな」
実哉にギュッと手を握られる。
俺はそれを握り返す。
実「俺な、亜芦にもう一つ話さないけん事があるんや」
亜「…留学?」
俺がそう応えると実哉は少し驚いたようにこっちを見てくる。
亜「…たまたま、理事長室に行った時に聞いちゃったの。盗み聞きする気はなかったんだけど…ごめん…」
実「別に怒ってはないで。ただな…」
俺は腹部の痛みを我慢して身体起こし、後ろから実哉を抱きしめる。
亜「大丈夫だよ。俺、ちゃんと待ってる。それに俺の決心にも繋がった。だからさ…だから…」
ここで俺が引き止めちゃ駄目なんだ。
ちゃんと送り出して、帰ってくるのを待つ。
実哉が振り返り、俺を引き寄せ正面から抱きしめてくる。
実「絶対、はよ帰ってくるからな。待っててや」
亜「実哉が帰ってくるのずっと待ってるよ」
涙が溢れ出てくる。
でも、泣いてるのは俺だけじゃない。
実哉も泣いてる。
辛いのは俺だけじゃない。
実哉だって辛いんだ。
だから、笑顔で行ってらっしゃいって言って送り出すんだ。
それで帰ってきた時には笑顔でおかえりなさいって言うんだ。
だけどね、今だけは…
いっぱい泣いてもいいかな?
泣くのはこれで最後にするから…
実「ありがとな、亜芦」
ギュッと俺を抱きしめたまま実哉が言ってくる。
俺は少し体を離し、膝立ちになる。
実哉の顔の位置より少し高い位置。
亜「実哉の泣き顔丸見え」
俺は笑いながらそう言う。
真っ暗なのによく見える。
ただたんに目が慣れてるだけだからだろうけどね。
実「亜芦やって、人の事言えんやろ」
実哉も笑いながら答えてくる。
お互い泣き笑い。
それが可笑しくてまた二人で笑う。
パッと目があった時にはお互い何も言わずに顔を近付けて触れるだけのキスをして、離れる。
実「亜芦、好きやで」
亜「俺も好きだよ」
至近距離でお互いそう告げる。
実「これちょっと恥ずいな」
亜「そうだね」
お互い顔を赤らめながも思わず笑ってしまう。
実「とりあえず、そろそろ寝ようかw」
亜「…うん」
実「俺、リビング戻るなw」
亜「実哉、一緒に寝よ。なんていうか…心細い…から…///」
自分で言ってて恥ずかしくなり、思わず俯く。
実「亜芦がええなら、寝よかw」
亜「うん!」
実哉と一緒に布団にもぐる。
実「おやすみ、亜芦」
亜「おやすみ、実哉」
そして、俺と実哉は眠りについたのだった。
額にあった濡れタオルがどっかいったけど、俺は見てみぬふりをした。
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