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“塑色亜芦”
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文化祭のあの日から一週間が経った。
この一週間、何も無かった訳でもないが特別何かをした訳でもない。
何処かに出掛けるかとか話もあったものの…
俺のお腹がなかなかのグロテスクな色になってたうえ、激しい動きでない事もあって、ほとんど寮で過ごしていた。
俺と実哉とユーとイクの4人で学校行って帰ったらゲームしたりお菓子食べたりと、ほぼ変わらない生活をした。
いつものように、ね。
そして、今日は実哉の出発する日。
今は朝の6時半過ぎ。
実哉は荷物まとめてる頃かな…
俺がいるのは寮の自分の部屋の玄関。
部屋の中に俺の物は何も無くてガラーンとしている。
もともと特にもの置いてなかったからさほど変わりはないか…
右手にスーツケース、背中に少し大きめのリュック。
この部屋に置いてあった俺の荷物がこの2つに仕舞われている。
俺もここを出ることにしたんだ。
一度きちんと向き合おうって思ったの。
だけど、ここに“塑色亜芦”はもう戻って来ない。
俺はスマホを取り出して、実哉に電話をかける。
出るかな…
3コール目で実哉は出た。
実『はいよ』
亜「…おはよ、実哉」
実『おはよ、亜芦。こんな朝からどないしたん?』
亜「今から実哉の部屋、行ってもいい?」
実『ええよ』
亜「分かった。あとで」
実『はいよw』
電話を切って、部屋を出る。
鍵をかけて、スーツケースを引っ張りながら寮の廊下を抜け、エレベーターに乗り込む。
6階に着くと、エレベーターからおりて、実哉の部屋に行く。
インターホンを鳴らすとドアが開き、すぐに実哉が出てきた。
実「はいよ。って、亜芦、その荷物どないしたん?」
少し驚いたように実哉が言ってくる。
亜「…1回家に帰ろうかなっていうか…もう少し向き合うべきかなって思ったっていうか…」
思わず口ごもる俺にポンポンと実哉が頭を撫でてくる。
実「そうかwそんで、今からもう行くんか?」
亜「…うん。昨日の夜、電話したら朝の7時に学校の近くの駅に迎えを寄越すって言われて」
実「えらい、はやいなw」
まったく、ホントそうだよ。
亜「…だから…その実哉に…会いに来たの///」
自分で言ってて、めっちゃ恥ずかしい…。
実「そっかぁwありがとな、亜芦」
優しく微笑みながらまた頭を撫でられる。
と、長々とここにはいられないんだ。
亜「あのね、実哉。次、会う時、俺は…」
実哉に手で口を塞がれた。
実「俺が“亜芦”と会うのがこれで最後って話やろ」
亜「…う、うん」
実「大丈夫やで。分かっとるから、な?」
亜「うん…」
あ、そろそろ時間…
実「亜芦、行ってらっしゃい」
ギュッと実哉が抱きしめて言ってくる。
亜「行って来る。実哉も行ってらっしゃい」
俺もスーツケースから手を離し、実哉の背中に手を回して、抱きしめ返す。
実「うん、行ってくるな」
そこで身体を離し、触れるだけのキスをする。
俺はスーツケースの取っ手を掴み直す。
亜「実哉、またね」
自然と笑みが溢れる。
実「うん、またな」
実哉も笑顔で応えてくれる。
不安じゃないかって聞かれると嘘になる。
寂しいかとか聞かれたさすがにってなる…
でもちゃんと、また会える。
だから、大丈夫。
あ、そういえば…
亜「…ユーには言ってもいいけどイクには内緒にしといてね」
俺は人差し指をたてて、口元に当てて言う。
そんな、俺に対して実哉が笑いながら返事をする。
実「はいよw」
よし…行くか…。
俺は歩き出す。
少しだけ後ろを振り向くと実哉がこっちを見ていた。
振り返った俺に気付き、実哉が手を振ってくる。
それに対して俺も振り返す。
再び前を向き歩き出す。
もう、後ろは振り向かない。
そして、俺…
“塑色亜芦”はこの学園を出た。
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