アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
<10>
-
ミサキの家に戻ってから、僕達は何もせずにいた。ミサキは床にすわり、僕はソファに寝そべっている。
「僕は金曜日に帰ることになった。少しだけ早まった」
「そう・・・。もうすぐだね」
不思議なくらい無感覚だ。何も感じない・・・。
「おなかすいたね」
確かに、今は15:00過ぎだ。朝から何も食べていない。
「どこかに行くにも中途半端な時間だね。何かつくろっか?」
「ほんとに?」
ミサキが僕の腕にふれる。この体温がもうすぐなくなるなんて信じられない。
「ここのキッチンは狭いし、コンロが一口しかないから。・・パスタでいい?」
「トモキが作ってくれるなら何でもいい」
僕は立ち上がって買い物にでかけた。ミサキに作るのは最初で最後だろう。手の込んだものも作れるけれど、それは嫌だった。シンプルなものでいい。
僕は食材よりもアルコールを多く買って戻った
「ミサキ、二日酔い?」
「いや、そんなことない。でも少し眠たいかな・・・朝倉がなかなか帰してくれなくて」
「マスターはこの間、仁さんに帰してもらえなかったから、その仕返しだね、きっと」
「朝倉はトモキが大事なんだよ。傷つけるなって言われた。・・・でも、それはもうしてしまっているね」
「・・・うん。お互いにね」
僕はワインを開けてミサキに渡す。ワイングラスなんてないから、ただのコップ。
床に座ってグラスを舐めるミサキ
途方にくれた子供のようだ
僕はたまらずミサキを抱きしめた
「どうしたの?」
僕はミサキの匂いを吸い込み、腕の中の温かさに涙がでそうになる
「ミサキ、今日はたぶん僕らの最後の食事だよ。そうはいっても、いままでも食事はほとんど一緒にしてないけどね」
ミサキは僕の背中を優しく撫でさする
「今日は僕、普通ができると思うんだ。」
ミサキは少し身体を離して僕を見る。優しくほほ笑んで、いきなり僕の鼻の頭をペロっと舐めた
僕はびっくりして固まる
ミサキはいたずらっ子のような目をして言った
「おなかがすきすぎで、お腹と背中がくっつきそうだよ」
僕はきっと泣き笑いみたいな顔をしていたと思う
普通のミサキがあまりに愛おしかったから
一口しかないコンロだから、スープスパゲティーを作った。トマトベースにツナを入れて、トンノのスープ版みたいな感じになった。レンジで鶏胸肉とブロッコリーに熱をいれて、オリーブオイルと塩コショウ、にんにく、オレガノで味を調える。
お腹と背中がくっつきそうだなんて・・・僕は口が緩んだしまりのない顔で料理をしていた。もし隣に重さんがいたら呆れて、そのあと怒り出すだろう。
最初で最後の僕の料理はいたって簡単な二品だった
ミサキは満足そうに口に運びワインを飲む
僕はそれを見て、心が満たされる。なんだか照れくさくて、ワインをたくさん飲んでしまった。
「これはお店のメニューにあるの?」
「いや、ないよ。あんまり簡単すぎるしね。でもツマミにもなるし、お腹にもたまるし便利だね。正直にいうと買い物にいって思いついたんだ」
「僕はそんなふうに思いつくことがないから、びっくりだよ。簡単だろうがなんだろうが、おいしいんだからすごい。」
「もうお腹と背中はくっついていない?」
ミサキはニヤリと笑う。
その笑みは初めて見るミサキの顔で、僕は気にいった。やっぱり大人なんだ、この人は。
「・・おいで」
僕は素直にミサキの腕の中に収まる。
「お腹がいっぱいになったら眠たくなった。」
「もう寝るの?」
「言っただろ、寝不足なんだよ、僕は」
僕達は手をとりあってベッドに行く。
互いに服を脱いで裸になるとベッドにもぐりこんだ。
抱き合って眠る。
目が覚めたら、今度は熱い時間がやってくる・・・。
まだ明るい時間だったけど、ミサキの温もりに安心した僕は、静かに眠りにおちていった。
穏やかな時間・・・僕たちの最初で最後の「普通」の時間…
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
10 / 14