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玄関を開けると、母さんくらいの年の女の人が立っていた。
回覧板を抱えていて、挨拶を交わすとすぐに俺に手渡して帰って行った。
「優ちゃん、誰だったの?」
回覧板に挟んである数枚のプリントをめくりながらリビングに戻ると、フライパンを洗っていた母さんが声をかけてくる。
「回覧板、持って来てくれた。えーと、伊藤さんだって」
回覧板についているチェック用の名簿を見て答えると、母さんはサッと手を拭いて、ありがとうと礼を述べつつ俺から回覧板を受け取った。
……手、離せるじゃねぇか。
心の中で母さんに毒づいて、溜め息をつく。
母さんは回覧板をパラパラめくって目を通した後、名簿にチェックを入れて俺に差し出した。
「これ、おとなりさんに持って行ってくれる?お母さん、まだ料理の途中だから」
そう言うと、ニコッと笑った。
げっ。またかよ。
俺が露骨に嫌な顔をすると、今度は手を合わせて拝んでくる。
「優ちゃん、お願い!!」
「分かった。行けばいいんだろ、行けば」
ため息をつきながら了承すると、ふふ、と笑ながら礼を言われた。
ったく、人使い荒いんだから。
玄関先で靴を履いている時、ふと気付く。
そういえば、回覧板って、どこに持って行くんだ?
まさかと思いながら、回覧板をめくり、名簿を見て平原の隣の欄を確認する。
カタカナで『ライアン』と書いてあった。
……おとなりさんだ。
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