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ー心ー
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夜中、気が向けば俺を抱く氷龍
毎日ではない
「ああっ・・・っ・・・」
「まだイクな」
「ひゃ!・・・・苦しいよ」
「その割には元気だな」
「ああっ・・・もう」
氷龍に抱かれるのは好き
腕の中でいつも考えていた
俺は氷龍の事が好きなのだろうかと
「イクぞ」
「んっ・・・あ、ああっ!」
部屋の人間は黙って寝たフリをしていた
「翔」
「何?」
「俺の物になれ」
「えっ?」
「身を護る為ではなく俺の為にだ」
「・・・・・・・・・・・・・」
「返事がないと言う事は好きな奴がいると言う事か」
「わからない・・・でも、氷龍の事は好きだよ」
「嬉しくはないな」
「ごめん、今はうまく返事が出来ない・・・もう少し時間が欲しい」
「わかった、それまでは利用されてやるよ」
「ごめんね」
氷龍の腕で抱きしめられながら、楓の事を思い出していた
楓と過ごした日々は短い
でも、氷龍と過ごした日々はもうその日々を軽く超えていた
俺は氷龍を愛せるのだろうか?
「もう寝ろ」
「んっ・・・おやすみ」
「ああ」
安心する腕枕と温もり
俺の心は振り子細工のように揺れていた
次の日
日曜なので作業は休みだったけど、氷龍の姿が無かった
どこへ行ったんだろう?
「182番」
「はい」
「出ろ」
「・・・・・・・・・・・はい」
何だろう
そのまま廊下に出て黙って歩いた
いつも鍵のかかっている鉄格子を開け、明るい廊下に出た
「ここで待て」
「はい」
えっ?
応接室みたいだけど、面会じゃないし
しばらく静かな部屋の中にいると、隣の部屋から声が聞こえた
(ああぅ・・・もっと・・・・もっとして・・・氷龍っ)
えっ?氷龍・・・って
もしかして隣の部屋で誰かと?
そっと部屋を出て隣の部屋を見ると、そこは所長室だった
また部屋に戻り、呆然としながら椅子に腰掛けていた
喘ぎ声はまだ続いている
氷龍は誰でもいいの?
どうして・・・
そして違う気持ちが芽生えた
それはジェラシー
どうしてかな
愛してはいないのに嫌な気分
(ああっ、中にだして・・・早く頂戴っ・・・・ああっ!)
醜い喘ぎ声だな
相手は初日に挨拶をしたおやじなのか?
隣の声が聞こえなくなると同時に刑務官がやって来た
「戻るぞ」
「はい」
どう言う事?
意味が分からない
でも・・・俺は確かにムカついている
部屋に戻り、イライラしながら本を取り出した
「おっ、何読んでるのかな?」
「・・・・・・・・・ゲーテ」
「へぇ!なるほどわからない」
「そう」
「俺はベースの事しかわからないな」
「ベース?」
「そそ」
「ミュージシャンなの?」
「一応な」
「大麻とか?」
「いやいやいや」
「そうなんだ」
ミュージシャンイコール大麻に結びつけるのもどうかと思い、反省しながら葵を見つめた
「イライラしてるみたいだけどどうした?」
「何でもない」
「そっか」
「葵はさ」
「うん」
「恋人とかいるの?」
「いるよ」
「女?」
「男」
「そうなんだ」
別に驚くような事ではない
そういう人間も存在するんだし、俺も同じだ
「面会には?」
「あいつは有名人だから来れないな」
「そうなんだ」
「新しいバンドを組んでさ、俺もメンバーなんだけどね」
「こんな所にいたらだめじゃん」
「だよな~」
そう言って笑う顔を見ていると、本当に罪人なのかと疑ってしまう
「じゃ俺は、有名人と話しているんだね」
「おいおい、ここでは関係ないだろ?」
「そうだけど」
待てよ・・・・・
葵って
「もしかして」
「ん?」
「恋人の名前は華?」
「おお!すごいな」
「やっぱりそうなんだ」
「その時のバンドを二人で辞めて3ヶ月前に新しいバンドに加入したんだ」
「そうなんだ」
葵の事は知っていた
音楽好きなら誰で知ってる人だった
俺も何回かライヴに行った事がある
ギターの華が恋人だと公表して世間を賑わした人でもあった
でも、楓の事はあえて尋ねなかった
尋ねても仕方が無い
罪人の俺には遠い人なんだ
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