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部屋にいると、氷龍の突き刺すような視線が気になった
無視してても疲れてしまう
楓は相変わらず無視
何を期待しているんだろう
馬鹿みたい
そう言えば、鷺の姿が見えない
どこに消えたんだろう
鷺が戻らないまま消灯時間になり、一人で布団の中に潜り込んだ
そして深夜
「何?」
「黙れ」
「お前・・・ふざけるな!」
突然氷龍に抱きしめられた
「暴れるのなら殴るぞ」
「へぇ、暴力ね」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「でも残念だったね、殴られても俺は抵抗するから」
「翔」
「離せよ!」
「ダメだ」
クソッ!
もうダメだ
力では敵わない
このままやられてしまうしか無いのかな
そう諦めて、抵抗するのをやめた
どんなに抵抗しても無駄なんだ
でも・・・・・すごく嫌で堪らない
「それでいい」
「・・・っ!」
前まであんなに愛おしかった唇が嫌で仕方が無い
このまま舌を噛み千切ってしまおうか
首を左右に振りながら、唇を遠ざけた
その時
「みんな”!起きて!火事!!」
そう言って湊が叫んだ
「チッ・・・」
「所長さん、部屋が火事なんだけど」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
仕方なく立ち上がり、燃え盛る布団を見つめていた
そして刑務官がやって来て、俺達を非難させた
でも、火事なんてどうして?
ふと、楓を見つめると何故か嬉しそうに笑っていた
どうして?
しかも葵も笑っている
火事なのにどうして?
燃えていたのは鷺の布団だった
火が消えるまで俺達は別の部屋で寝ることになった
氷龍はいない
今夜は眠れそうだ
こんな時に面倒な事が起きるとは
でも、何故布団が?
検証もあったので朝まで眠れなかった
どうやら直接火をつけられたようだか、誰が?
所長室に戻り、溜息をついた
「ふふっ・・・残念そうな顔ですね」
「いつからいた」
「さっきですよ、ここにいれば来ると思いましたので」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「そんなに翔が欲しいのなら、翔の想い人を殺してしまえばいいのでは?貴方なら隠蔽出来るはずでしょ?」
「殺す?」
「はい・・・相手はわかっていますよね?彼の悲しむ顔が見たいでしょ?見たいはずです」
「黙れ」
「はい」
楓を殺せと言うのか?
でも、あいつが消えたら翔は戻って来るかも知れない
戻らなくても、無理矢理鎖で繋いで飼いならせばいい
「それもいい提案だな」
「ふふっ」
翔の本音を知るいい機会かも知れない
普段は目も合わせないが、楓が死んだらどうするんだろう
考えるだけでも笑いが止まらない
「部屋に戻る」
「はい、ナイフは持ちましたか?」
「黙れ」
火事騒ぎのおかげで、みんなが部屋に戻って来たのは2日後だった
相変わらず翔は本を読んでいた
楓は一人か
今がチャンスかも知れない
ナイフをそっと取り出し、握り締めた
「悪いが死んでもらう」
「えっ?」
突然の事で動けないらしい
笑いが止まらないな
「死ね!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・確かに楓を刺したはずだった
なのに
「ぐっ!」
「翔!」
翔が楓を庇うなんて
やはりそうなのか
倒れる翔を抱きしめようとした瞬間
「触るな!」
楓がそう言って睨み付けた
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「出て行け!」
翔を抱きしめながら冷たい瞳で俺を見ていた
俺はその場を立ち去り、鷺を痛めつけた
本当は楓が死ぬはずだった
なのに俺は・・・・
やはり翔の相手は楓だったんだ
後悔と憎しみ
二度と翔は戻らない
そして次の日
お偉いさんが数人やって来た
刑務所の中のガサツさが耳に入ったらしい
そのうち翔の事も耳に入るだろう
だから・・・・
「何をしている!」
「捕まるのは嫌なのでね」
「やめなさい!」
拳銃を向けながら、窓を突き破り外に出て身を隠した
外の世界でも生きていける
金さえあればね
でも、失ったものは大きかった
「氷龍」
「鷺・・・お前」
「どこまでもお供しますよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「貴方が好きですから」
「・・・・・・・・・・行くぞ」
「はい」
俺は傷付いた鷺を連れて夜の闇に逃げ込んだ
結局、俺がこいつを支配していたのではなく、知らず知らずのうちに俺が支配されていたのか
まぁいい・・・俺にはお似合いの相手だ
「明日、高飛びするぞ」
「はい」
こうして俺は鷺を連れて海外に脱出した
本当は翔と見たかった景色
「綺麗ですね」
「ああ」
「幸せですか?」
「どうかな」
「私はとても幸せですよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
俺はこいつにまんまとやられたようだ
楓を殺せと煽ったのもこいつ
でも、俺にはこいつが相応しいのかも知れないな
そっと髪を撫で、頬についた傷にキスをした
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