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バイト先の仲間 1
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きっと、バチが当たったんだと思う。
最近のオレはせんせーに頼りすぎていたから。とくに昨日は名前まで呼んでもらえて、家に泊まって、せんせーの優しさにどこまでも甘えてしまったから、神様とか仏様とか、運命とか、そんななにかが怒ったのかなぁとかバカなことを思いながら皮肉な笑いが溢れた。
少しずつ不自然に見えない程度にせんせーとは距離をとらないと。
せんせーの優しさに甘えすぎていてはだめだってわかっていた。
せんせーも、オレが離れていったらめんどくさい奴がいなくなってラッキーだと思うだろうし。
オレに居場所をくれた幼馴染みを傷付けてまで自分のわがままを通す訳にはいかないしね。
携帯のアドレス帳には昨日「なんか厄介なことがあったら、めんどくせぇことになる前に連絡しろ」とぶっきらぼうに教えてもらった連絡先がひとつ。
あんなに教えてもらった時は嬉しかったのに今は少し切ない。
「お前でもため息つくことあんだな」
「ぅわっ」
突然誰かに、肩に手を回されてびくっと跳ね上がった。
振り向くと、いつもはギリギリに出勤する光邦さんだった。
「あはは。光邦さんかー。びっくりしたじゃないですかー」
「いやすぐ声かけようとしたんだけどさ、お前なんか暗い雰囲気だったから珍しいなーって見てたんだわ。どうしたよ?悩みごとならおにーさんが聞いてやろうか?」
少年のような笑顔でいつも気さくに話しかけてくれる光邦さんは兄貴気質だ。
「いやー、今日土曜日だから忙しいかなって考えてただけですよー」
「じゃあそんな忙しい今日を乗りきったら優しいおにーさんが帰りにラーメンおごってやるよ」
「えー!いいんですかー。やったーいつもの3倍頑張って働くー」
「おー。俺の分まで頑張って働いてくれ」
ツーブロックの茶髪をワックスで軽くかきあげながらニッと笑う光邦さんを見て、こんなお兄さんが本当にいたらいいのにと思う。
お客さんから、この店の従業員は顔で採ってるのか?って言われるくらいみんな美形揃いで、だから光邦さんも顔はもちろんのこと、身長までスラッと高くて、細身なのに着替えるときに見える筋肉は割りとしっかり引き締まっててスタイルもいいし、性格も申し分ない。
それなのに彼女がいないらしいから不思議だ。
「あー、暁!おはよー」
更衣室に入ってきた暁さんに、光邦さんが笑って手をあげる。
暁さんは目を合わせないで「………おはよ」と小さく言うと、さっさと自分のロッカーに向かってしまった。
「暁さん、おはようございまーす」
「おはよ。昨日、休みだったでしょ?ルリ目当てのお客さん来てたよ」
暁さんは元から静かな雰囲気で口数も少ないけど、光邦さんにはやっぱり他の人より冷たくしてるように見える。
ふたりは幼馴染みのはずなのに。
「えー?だれですか?」
「………ほら、あの、毛が薄くて、バーコードみたいな髪の」
「バーコードってお前な。鈴木さんだろ」
吹き出して笑う光邦さんに吊られて、オレも笑ってしまう。
暁さんはクスリともしないで「その人」と短く答えるだけだった。
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