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August 20.2015 お兄様現る
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「おはようございます!」
朝の挨拶はしっかりきっちり大きな声で。
「おはよ~。」
「おはよう。」
厨房からミネさんと飯塚さんの声、こちらは元気溌剌とはいいがたい。
そうなのです、夏の厨房は地獄のような暑さなのですよ。なにせ熱を発するものばかり、揚げ油、蒸し器、鍋のお湯、炒める火。熱源だらけのこの場所に真夏の気温がプラスされるわけなので、もうそれはそれは大変なことになっちゃっているわけです。
「ハル~来て早々悪いけど、おつかい行ってくれるか?それと両替。」
「わかりました!」
経費袋を受け取り用事足しを済ませるためにまた外に出た。
あちい・・・今日も暑くなりそうだ。最近は札幌でも九州より気温が高かった!なんていう日もあるし、夕方でも30度近いなんてことが増えた。
確実に温暖化してること間違いなし!です。
そうはいってもお盆までです、それを過ぎればデリシャスな秋がやってきます。実りの秋!それまで暑いのは我慢。
知ってました?汗腺の発達って3歳くらいまでに決まっちゃうってこと。あまり汗をかかない環境で暮らすと汗腺が発達しないってことらしい。
絶対北の人間は発達してないと思います。汗腺は退化してるかもですよ?冬に備えて寒さに耐える蓄熱には長けているけれど、体の熱を発散させるのが下手だと思います。
べらぼうに暑さに弱いですもんね。
30度を超えてしまえば、サハラ砂漠に投げ込まれたかの如く「暑い、暑い」を連発します。
だから道を歩かず、店舗や地下街をそろそろと移動です。
雪が降っても同じだな~。冬も地下ばっかり歩きますからね。
春と秋以外は、札幌市民は地底人に姿を変えるのです!
店に戻ってオープン準備。ホールを整え、カトラリーを揃えたり、お湯をわかしたりドリンクの不備がないかをチェックします。
カウンター席におかれたランチメニューを確認。
定番ものと一緒に日替わり的なのがプレートランチとパスタランチ。
今日のプレートランチは、な、なんとカレーです。夏野菜たっぷり、スパイシーが暑苦しさをふっとばしてくれそう。
パスタは冷製パスタ!うお、冷たいのですか・・・僕は食べたことがない。
メニューを見ながら百面相をしていたらしい僕を見てミネさんが笑っている。
だって、仕方ないじゃないですか・・・。こういう時はお客さん目線になってしまうのです!
「カレーは盛り付けを写真に撮ったのがあるから、説明できると思う。」
指さした先のアルバムには付箋がされていたので、そこを開きます。
うお、想像と違った!夏野菜はルーの中にはいない。綺麗な揚げ野菜に変身してごはんの脇に素敵に高々と盛られていた。ズッキーニ、かぼちゃ、パプリカ、茄子、ピーマン。人参とビーンズのサラダも添えられている。
そしてこのカレーが必殺に旨いのです。アホみたいな玉ねぎの量にもビックリでしたが、セロリに人参、トマトに野菜ジュース。ニンニクとショウガ、あと秘密のスパイスたちが織りなすカレーが不味いはずがない。
初めて作っているのを見たとき、素直に驚きました。カレーって水いれなくても作れるのかと。
僕のカレーは野菜を適当にゴロゴロ切って軽く炒めてジャーって水いれますから。いれますよね?
冷製パスタ・・・つめたいパスタ。ソーメン的な?
「ミネさん、冷製パスタ食べたことがないのですが、何味ですか?」
「トマトとバルサミコ、バジル、モッツァレラチーズ。カプレーゼ的な味わいかな、しいていえば。」
パスタと合うのだろうか・・・カプレーゼで食べる方が美味しいような気がしてしまいます。
「パスタはカッペリーニだから、英語的にはエンゼルヘアー。」
天使の髪?うわ、なにそのネーミング。
「こっちきてみ?」
「はい!」
「これがカッペリーニ、細いだろ?」
「こんな細くてもパスタですか!」
「そ。だからゆで時間が短い2分弱かな。だから時間のない人にもおすすめできるよ。」
ブクブクしている鍋にカッペリーニなるものを入れたミネさん。タイマーセット!
「そうめん並みのゆで時間でいい。冷製パスタはソースと絡みが悪いから嫌いだって言う人が多いけど、カッペリーニを使えば問題解決。」
ゆで上がったパスタはなんと氷水でしめております。
ますます日本の麺のようです。
「実は茹で汁に少し秘密があるのだよ。昆布水に昆布茶をいれたお湯でゆでているのだ。」
「昆布?」
「そ、麺にうっすら旨みをのせるわけ。グルタミン酸とトマトはよく合うんだよ。」
科学的なアプローチもされるのですね、ミネさん。
「よ~く水を切って、少しだけオリーブオイルをなじませて、このソースにいれます。」
ボールにはトマトとバジルがみえます。白いのがチーズだから、バルサミコや塩で味が調えられているっぽい。
手早くあえて、涼し気なガラスのボウルに盛り付けてバジルを飾ってできあがり。
美味しそう。
「これと冷えた白ワインは最高なんだけどね、ランチだと飲める人は少ないのが残念。ほい、食べてごらん。」
「え、いいんですか?」
「味を知らずにおすすめはできないだろ?」
こういう時のミネさんは正直格好いいと思います!
忙しい仕込みの合間に作ってくれたり、写真を用意してくれたり。
ありがたく「いただきます」をして一口。
冷たい、美味しい、トマト甘い~。麺が細くてスルスル入ってくるし、バルサミコがいい味です。
バジルも爽やか、これはまさしく真夏の一皿です!
「美味しい!真冬でも美味しく食べられそうです!」
「あははは、まあ、その顔は美味しい顔だな。」
「はい・・・おいし・・・。」
「そんじゃ、その味と気持ちをお客さんに伝えてくれればいいさ。冷製だって美味しいからね。お客さんが好きな料理が増えてくれたらいいよな。
作る俺達も氷水でしばし熱気から解放されるし。」
よくお客さんに「おすすめはなんですか?」と聞かれます。
正直言うと、全部です!と言いたい。美味しいと思うからメニューになっているわけなので。
聞くだけ聞いて全然違う物を頼む人もいるし、「じゃあ、それ。」といってすんなりおすすめした料理をオーダーする人もいます。
今日はカレーと冷製パスタをがっつり推すことにしますよ~。
ホールは僕一人なわけで、てんてこ舞いですが頑張ります!(早く理さん来てください!)
今日も一日張り切ろう、賄いなにかな・・・楽しみ。
そしてオープン時間。
ランチメニューの看板を外にだして、気を引き締める。
「ちょっと早いかと心配したけど、開いてるじゃん。よかった。」
オープン早々、いらしたお客様。
この背後に聞こえる声は…声は・・・
「い、いらっしゃいませ。」
「一人なんだけど、そこの隅のテーブル席いい?」
イイも何も、僕にダメといえるはずがない。
「タケさんじゃないですか・・・。お元気でしたか?」
「なんだよ、その棒読み。誰に髪切らせてんの?僕に断りもなく?どうなのよ、ハル。」
笑顔なのに背筋が凍る・・・美しい微笑みは恐怖とともに!
久しぶりに登場しました、理義兄のタケさんでございます・・・。
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