アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
october.6.2016 西山のとある日
-
『続きが気になります。トアさんこの二人の次のお話しはありますか?』
あ~~あ、またこんなコメントがでちゃってるし。
パソコンの画面を見ながら、思いがけないこの反応に戸惑っている私。だってあれは相棒という関係が友情ではないものに育つかもしれないよねっていう・・・別に二人の恋愛小説が書きたかったわけではないのだ、断じて。同性に格好いいとか綺麗だって思うことは誰しもあるだろうし、憧れやそのちょっと先に片足をつっこんだ人はいるはずだ。その先に進む場合もあれば回れ右で逃げ出す人だっている。
この二人がこの先どうなるかなんて、別にいいじゃないの。
私としては正直どうでもいいわけで・・・こんなことレスしたらトアさんの人気が急降下でしょうね、きっと。
「正直僕もびっくりで、けしからんなんていうコメントがくるかと少々ビクついていたのですが、続きが知りたいコメントが多くてびっくりしました。でもこれ、続きはなしでいいですよね。僕はこれでいいと思います。」
トアさんとの電話を思い出す。そうよね、これ続きって言われてもね。
でも何パターンも提示できるわよ?その気になれば。
ドキドキしたものの、これはおかしいと必死に気持ちを押し込んで女の子と付き合う。その姿を見て、やっぱりダメかと相手も引いてしまって終了。この流れにしたら「どうして!」「えええ!」という反応をされるはず。
認めないぞ~俺は断じて認めないぞ~これは好きとは違うぞ~と葛藤しつつもやはり相手が気になる。でも踏み込む勇気がなくて結局告白された女子と付き合うことにした。そして穏やかな日々を送れるようになった矢先、相手が男とキスしているとか抱き合っているところを見ちゃって「男なら俺でいいじゃないか!」的思考になり「お前は俺が好きなんだろ?違うのか?」という展開。この流れでヤキモキ度をてんこ盛りにしてエピソードを重ねれば…それらしいBL系のお話しが完成。
でもこれってシネマレストランに必要ないし、別にそういう要素はいらないよねって事。
コーヒーメーカーのブザー音が聞こえて立ち上がる。最近のお気に入りはコーヒーにブランデーを入れて飲む方法。頂いたまましまい込んであったブランデーを試しに入れてみたら割と美味しかった。
ボトルからマグカップにドボンとブランデーを注ぐだけ。コーヒーのふりしてアルコールを摂取する悩める警察官みたい。事件に囚われすぎて自分を追い込むみたいなね、何の映画だったかしら。それともドラマ?いずれにしてもよく出てくる登場人物。
ナポレンが好きだったカフェロワイヤルはブランデーで湿らせた角砂糖に火をつける。スプーンの上でゆらゆら揺れる青い炎を眺めた後コーヒーにいれるらしいけど。
自分のためにそんなことはしない。第一この家コンロはIHだし、マッチなんか置いていない。
温かいマグカップを片手にパソコンの前に戻る。ページを更新したらトアさんのコメントがついていた。
『映画も小説も必ずラストがあります。きっちり答えが提示されるパターンやハッピーエンドは気持ちがすっきりします。僕はこのタイプも好きですが「え?これどうなってしまうの?」というラストも嫌いではありません。自分が感情移入した人物たちがこの先どう生きるのかと想像してしまうからです。たとえば「セブン」(ブラピ、モーガンフリーマンの二人が刑事の映画です)
あの結末を迎えて二人の男はこの先どうやって生きていくのか、僕はこの想像からなかなか抜け出せなくて「セブン」を長いこと引きずりました、何日も。映画館に3回行ってDVDも見ました。その度に二人の今後の人生が色々変わるのです。暗いものもあります、救いが見えるものもある。
1本の映画によって自分が何を感じ、何を思うのか・・・これに向き合えるのは「続き」がありそうなのに提示されない映画ではないかと。
サラリーマンの二人が、これからどうするのか。
ビールを飲んで話をする。週明けどんな顔をして会社にいくのだろうか。女性社員に「お腹がすいていたら効率あがりませんよ。」は言わなくていいからねと彼は言うのだろうか。それともあえて言わせる?
そんな事を考えるのだって十分楽しいのです。なんでしたらその先を自分なりに書いてみるのもいいですよね。意外と文才あるな自分!なんていう発見につながるかも?!
これからも映画によって沢山の想像に出会えますように。 トア 』
さすがだわ・・・。
これで「続きないですか」コメントは増えないだろうし、あったとしても「こちらのコメントレスを参照してください。」の導入と「続きはないのです。」で問題解決。「セブン」を見ていない人はDVDを借りに行く可能性もある。
高村さんは偶然声をかけたって言ってたけれど、それは嘘ね。絶対トアさんのこと観察していたはず。
SABUROのメンバーのバランスは完璧だし、トアさんのピースが有ると無いとでは大違い。
セブンってどんな映画だったっけ。結構前だし明るい映画だったイメージはない。キーを叩いてプライムを検索するとあった。ちょっと見てみようかしら。シネマレストランには採用されないだろうけど。
<<2時間7分後>>
「うわ・・・これ落ち込む。」
思わず声に出ちゃったじゃない!きっと前に見たときは他の事をしながらとか、半分寝ていたとかそんな状態だったはず。そうじゃないとこんな内容忘れるわけがない。
トアさん、これ映画館に3回いったの?これを何回も大画面で?それは色々な想像に囚われるにきまっている。残念ながら私は救いのある二人の未来なんて思いつかない。
所詮刑事だって俺と同じなんだよ!神のもとでは罪を背負った存在でしかないんだ!わっはっはっていう犯人の思惑通りになっちゃうし、定年間近でようやく隠居できるという希望は塵になるし。
ここに救いを見いだせるとしたらどんな未来?私はそれをトアさんに聞いてみたくなった。今度SABUROに行ったら絶対質問しよう。
画面を閉じてシネマレストランに戻ってみる。またコメントが重なっていた。
『セブン、私はあの箱の中身がわからなくて、ラストでどうしてああなったのかわかりませんでした。トアさん解説していただけませんか?』
「嘘でしょ!!」
【ガダン!!!】
思わず握りこぶしをテーブルに叩きつけてしまった。パソコンが怯えたように少しだけ動いてマグカップがカタカタしたから、かなり強めの握りこぶしだったに違いない。
そりゃ力もこもるわよ、えええ?あの中身がわからない?それじゃあのラストにつながる動機が理解できないから、映画自体が意味不明になるはずだわ!!
でもこれ解説したら完全ネタバレになるから、トアさんどうするのかしら?
難解で前衛的とか、D・リンチみたいにまるでわからないとか(私は好みじゃない)なら話は別だけど、あの箱の中身がわからないとは驚き!
きっとトアさんのセレクトはシネマレストランにしやすくって誰が見てもストーリーを追えるものにしてくれているのだろう。ほろっと泣けたり、何かに気が付くきっかけになる、そんな映画ばかりだ。物語を作るのだって楽しくできる。
でも「セブン」じゃ無理ね。やっぱりトアさんは最高だわ、色々と。
2時間映画を見てしまったせいで、予定ではすっかり終わっているはずのスケジューリングがまだ済んでいない。請求書を終わらせておいてよかった。
「delicious」のアクセスは好調。情報面を伏せたSABUROだったけれど、毎日「行ってきました。」の書き込みがある。感想?味もスタッフも最高~っていうものばかり。難癖つける人がいたら私の権限でコメントを削除してやるつもりだったのに、そんなことにはなっていない。でもやっぱり、そっとしておきたいというのが本音。でも高村さんと北川さんの指令には逆らえるはずもなく・・・。
でもこれで全国各地からの情報が寄せられるようになり、取材リストは増えていく一方。各地方のタウン情報誌からの取材申し込みや共同企画のアプローチなどなど、思わぬ広がりをみせていて24時間じゃ時間が足りない・・・暇よりはマシだけど。
ロクに料理をしない私は取材を重ねたりトアさんとやりとりするたびにSABUROに行きたくなる。そして我慢できなくなると飛行機にのってしまうのだ。
実は最近、日に何度も考える。
全国飛び回るのならどこに住んでも一緒じゃない?
新幹線移動より、飛行機のほうが断然楽だよね?
千歳~羽田なんか1時間に3本飛んでいたりするんだよ?
湿度や梅雨、熱帯夜に猛暑日なんかに無縁って素敵すぎない?
そもそも私東京の人間じゃないよね?
行こうと思えば毎日SABUROに行けるって素敵じゃない?
パニーニをテイクアウトして大通公園で食べることだってできるのよ?
盛大にグラグラ傾きつつある。
そう・・・盛大に。
ぼそっと石田さんに漏らしてみたら笑いながら言われた。
「家賃は無駄になるかもしれないが、1~2ケ月札幌を拠点にして仕事を転がせるかどうか試してみればいい。ホテルは贅沢だからウィクリーマンションで十分だろう?」
頭でウダウダ考えていたって仕方がないのは経験上嫌というほどわかっているはずなのに。試してみようって何故思わなかったのかしら。
「帰ってくればいいじゃないか。」そう言ってくれるのを期待していた?
だとしたら私はまだまだ甘ちゃんだし、石田さんの背中はまだ遠い。
「美味しい鮭が食べたい。カマのところがいいな。」
声にだしてみたら、じゅわっと口の中に唾液があふれ出す。これこそホント、パブロフの犬だわ。
ジャガイモの真薯を鮭の切り身でくるんで、美味しいダシの餡がかかっている料理!あれどこのお店で出していたんだっけ、新じゃがに鮭・・・最高なのよね。
検索しようと画面を切り替えたらニュースの項目にある「北海道利尻岳初冠雪」が目に留まった。
こっちは真夏ですか?な気温だというのに、北海道は確実にちゃんと「秋」をしているみたい。
鮭とジャガイモ、イクラ・・・あとSABURO!
スケジュール表をひっぱりだし、取材候補を並べる。どうにかするのが私でしょ?そうやって生きてきたんだから。
スケジュールを埋めている最中、ずっと頭の片隅にはジャガイモの真薯がちらちらしていた。
気になることは解消させないと効率が下がる!
私が無条件に頼れるのは石田さんだけ。くだらないことから真剣なことまで全部。いつも笑いながら答えをくれる。
スマホをタップしてダイヤル。
「いきなり電話してきて何を聞くかと思えば、お前は相変わらずだな。」きっと笑ってそう言ってくれるはず。
「お疲れ様です。石田さん、あのジャガイモの真薯ってどこのお店で食べられるんでしたっけ?
ええ・・・いつもすいません。
あああ~あそこでしたか。
実は札幌リターンが現実的か試してみようと思って。
ええ、ええ、あははは。
ですね。
はい、え~と・・・
END
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
BL要素ゼロですいません。全然降りてこなくて悶々としていたら西山が助けてくれました。
トアのコメントどおり、西山と石田さんの会話がどういう方向になっていったのか。それは皆さんが想像してください。私が思うにたぶんああいう方向に・・・黙 モゴモゴ
「セブン」のくだりですが、私は3回みました。毎回違う人とです。そしてその中の一人が「あの箱なんだったの?」と聞いたのです。さらに「犯人は生け捕りのほうがよかったのかもな。」
あまりのことに驚きすぎて何も言えなくなったことを覚えております(笑)
その方ですか?お知り合い程度にとどめておきました。共感できないって未来に影をおとしそうだったのでww
西山はD・リンチが好みじゃないそうですが、私は猛烈に好きです。一応言っておかなくちゃっていう、どうでもいい報告でした。
次はちゃんとカップルな誰かが降りてきてくれると信じております!!
もう少しお待ちください。
あ、利尻岳初冠雪。これは本当です。北海道は確実に秋なのでした。
せい
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
320 / 474