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袋小路
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九 袋小路
ガルデは僕を上着でくるみ、袋小路に抱えていった。そこは少年の溜まり場になっているらしかった。既に幾人かしゃがんでいたのが、振り返って僕らを見ると口々にうわさし合った。
「見ろよ、シアンじゃないぜ!」
遠くにいた連中も寄ってきて
「おい、ガルデ、シアンはどうした?」
皆同じことを聞いた。
「シアンは仕事だ」
ガルデは素気なく言った。
僕らは隣同士に座っていた。ガルデは僕の脚を、自分の腿の上にのせた。ガルデの仲間が、しゃがんで下から覗き込んだ。
「すべすべだな」
ガルデの友人が、僕の内腿をさわって言った。友人はガルデに微笑みかけた。ガルデはゆっくり首をめぐらして友人の方へ身体を傾けた。僕の足首を取る者がいた。くすぐったい。
始めは遠巻きにしていた輩も、次第に近寄って来ていた。僕は圧迫されるような視線を感じた。ガルデはそんな中で、僕をくるむ上着を剥いだ。人の肩越しに覗き込む者もいた。
次第に狭まる人垣の中、僕は路面に手をついて、犬になった。
僕は、尻に指を入れられて、ゆさゆさ揺すぶられていた。僕は犬のように舌を見せ、目をつぶって集中していた。
「目を開けて」
ガルデが言った。目の前に、ガルデの仲間の靴が見えた。ガルデの手がのびて、僕のあごが上げられた。僕は舌を伸ばして、唇をかすめるその指を、しきりと咥えようと試みた。
「ああ、我慢できねぇ」
「どさくさにまぎれて、ガルデにぶっかけるなよ」
人垣の外のほうから声が聞こえると、誰かがヒヒッと笑った。
「馬鹿、聞こえてんだよ」
ガルデは僕から目をはなさずに彼らに言った。
僕はすすり泣いた。
「いきたい」
「ほら、もっとよく見えるように、脚を広げて」
僕はぶるぶるする脚を広げた。
「もっと高く上げて」
僕は尻を突き上げた。
「すげえ卑猥だ」
腰を動かし呻く僕を取り囲む輪が、いっそう縮まった。
「杏、顔を上げて」
ガルデは僕に命じた。
「ちゃんと、顔を見せるんだ」
僕は手足を路面につけたまま、顔を上げた。
「見えねえ、おまえちょっと頭下げろ」
人垣のどこかで声が聞こえる。
「いいか。指を抜くぞ」
「あ……」
ガルデは僕の顔を観察しながら、ゆっくりとその指を僕のお尻から抜いた。僕は目をつぶり、声にならない吐息を漏らした。僕の身体は、失われたものを力なく、求めた。
「目を開けて」
ガルデの声に瞼を開くと、僕の表情をのぞきこむ、きらきら輝くガルデの眼があった。
「ガルデ……」
僕は、うっとり呟いた。ガルデは僕を抱き上げ、僕の耳の後ろや首筋にキスを浴びせた。僕は、ざわめきを、ただ波のように感じた。
ガルデは蕩けてぐらぐらしている僕を支えながら、尋ねた。
「今日は誰だ」
人垣の奥から
「俺だ」
と声がして、皆の足が道を開けた。髪の長い若者が僕の前にしゃがみ、僕の頭を手で挟んだ。
「いい顔している」
背は高いようだったが、そう言って笑った彼の表情は幼かった。薄く筋肉がついた身体を見せながらも、きれいな顔立ちで、野蛮に髪を伸ばしていた。
僕の身内から再び欲情が沸き上った。
「もったいぶるなよ」
誰かが、後ろから彼の腰を抱いた。彼は自分のバックルに手を掛けた。僕は吸い付いた。
「んー」
僕が尻を揺すって身悶えしていると、指が入ってきた。
「んっ……」
僕の口の奥にペニスが入った。指の動きが激しくなった。頭を挟み込んだ手が、僕の頭を物のように動かしはじめた。頭上の彼は、激しく呻いていた。かすかに見上げると、腕で彼の胸を締め上げていた後ろの若者が、回り込んで、一度その喘ぐ口を口で塞いだ。
首を振った彼と僕は目を合わせた。彼は後ろから支えられながら身体を波打たせ、幾度か嗚咽を引っ張った。僕の口が生暖かいものでいっぱいになった。僕が下を向いて吐き出そうとすると、別の手に上半身を起こされた。口の端から、粘液が胸に垂れた。
「ほら」
すかさずもう一度口に差し込まれた。何人かが堪え切れず、僕の肩に放った。僕の胸や背に暖かいものが流れた。
「羅音さん、闇雲に探したって見つかるものではありませんよ」
椰子は足早に街を歩きまわる羅音に、うんざりした口調で言った。
「椰子、ちょっと、あの人だかりは何?」
羅音は、路地の奥に、少年たちが群がっているのを見て問うた。
「え?」
椰子は、路地の奥を覗き見て、慌てて羅音を、彼らの目から隠すように、通りの方へ押しやった。
「ちょっと、何? 見せてよ」
羅音は、椰子に抵抗した。
「いいですか、ここにいて下さいよ」
椰子は何度も念を押して、路地の奥へと偵察に行った。
帰って来た椰子に、羅音は待ちきれず聞いた。
「どうだった? 杏いた?」
「いませんよ! いるわけないじゃないですか!」
とんでもない、と止める椰子の態度を、羅音はいぶかって
「何があったの? 僕も見てくる……」
「ダメです! ダメ、絶対だめです」
椰子は、羅音の前に立ちはだかって、羅音を行かせまいとした。
「おかしいよ、そんなに興奮して……」
またも行こうとする羅音を引き止めて
「危険です、あんな所に羅音さんが行ったら、たちまち取って食われてしまいますよ、さあ帰りましょう」
椰子は羅音を無理やりタクシーに押し込んで帰った。
放心した僕は、幾つかの手に支えられ、顔を上げた。僕は見た。若者の背をきつくつかんだ指と、肩越しに見えるくしゃくしゃの髪。重なり合った顔が呼吸するかのように離れた時、僕は身を振りほどいて叫んだ。
「ガルデ!」
抱きすくめられた腕の中から、ゆらりと立ち上がったガルデ。ガルデは頭をめぐらせて言った。
「お開きだ。帰れ」
二、三人が残って、僕の身体を拭いたり、上着を着せかけたりしたりした。ガルデがリードをはずした。僕はガルデに背負われた。アパルトマンの階段下まで仲間の一人がつきそった。ガルデは僕をおろした。つきそってきた仲間はガルデと幾度もハグを繰り返し、名残り惜しそうに見送っていた。僕は裸足で階段を上がり、覗き込んで下を見た時、まだシルエットがあった。半分顔が照らされていて、少しまぶしそうに見上げていた。
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