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「和泉、なんで何も言わずいなくなった。なんで連絡を途絶えさせた。」
「アキ、それはね、苦しかったんだ。どうしようもできなくて僕は逃げ出した。
そしたら楽になれるって思ったんだよ」
「俺はあの日、お前の手を離したことをずっと後悔してきた。
どうした?ってきいてやれなかった・・・言っていればお前は此処にいたのか?」
アキ、君のせいじゃないのにね。いつも優しいアキ。
「アキがあの日聞いてくれたら変ったかな、いや変わらなかったと思う。
僕が一番どうしていいかわかっていなかったからね。僕には時間が必要だったんだ。
答えはすぐにでたけれど、それを認めて飲みコムにも時間がかかった。
そしてそれを無かったことにしようとするのにさらに時間がかかった。
そして無かったことにするにはこのままじゃいけないと気がつくまでに、また時間が必要だった。」
僕はバカだったんだ。自分の心から逃げられるはずがないのにね
「覚えているかな?アキはトニ一レオンに似ていると僕がいったときだよ。」
「覚えてる、さよなら子供たちの話を俺がした」
「そうだよ、その時、涙を流すサラリ一マンの話をしてくれたよね。僕が綺麗なフランス人に似ているっていうから嬉しかったんだ。でもそのあと悲しくなった。
アキはそのサラリ一マンと寝たんだろうって、何故かわかってしまったからだよ」
「でも、俺は、そんな・・・」
アキが慌てている。なんだかおかしい。
「アキはそういわなかった、でもわかったんだ。僕はとっさに寝たふりをしたんだ、アキはタオルケットをかけてくれたあと壁にもたれて何かを思い出していた。
それでね、あ、サラリ一マンを抱いたことを思い出しているんだって、気がついてしまったんだよ」
「起きてたのか・・・」
「僕、悲しかったんだ。どうしてなのかわからなかった。
たぶんこの時がはじめて自分の心がざわめいた時なんだと思う
そしてその後、お店で偶然鉢合わせしたよね」
あの人を思い出すと僕の胸が痛む。
「お前は彼女と一緒だったな、彼女の顔はろくにおぼえていないが」
アキが自嘲気味な笑みを浮かべる。そんな顔をするアキは知らない人みたいだ。
「あの日から僕はおかしくなったんだよ」
僕は床を見つめて言葉を続けた。
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