アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
㉘
-
「でも俺が頬に触れたら、顔を歪めた。やはり・・・拒絶されたんだと悲しくなった。ものすごく。」
僕はアキの言葉にカっときた。身体の中から凶暴な心が起き上がる。
自分で自分を止められなかった。
「だって、それはアキのシャツをつかんでいた、あの男にしていたことだったからだよ!
寒くて寒くて、体中が痛くなるほど寒かった僕にアキの手は暖かかった。
暖かいのに僕のものではないんだよ!
あの男にはくれてやったアキの手のひらじゃないか。僕は今まで貰ったことがない!
アキの手がこんなに暖かいのを僕だけ知らなかった!」
もう僕は限界だった。涙が頬を伝う。
「アキは優しいから、同情で僕を受け入れることもできるだろう。でもそれは嫌なんだ。
だから僕がだめなら正直に言ってくれよ。
そしたら僕は今度こそ、引き返すことができると思うんだ。」
「だめだと・・・?」
「その時は、この思いを削り取ってでも一人でいることを選ぶ。」
同情はいらない、友達だからと正直に応えてくれないのなら・・・いらない。
耐えられないかもしれないし、忘れることもできないかもしれない。
でも、その時はアキに言ったように、気持ちを削り取る。
・・・削ってみせる。
アキが背中から床に崩れた。
信じられないことに、アキが涙を流している。
泣いているアキを初めて見た僕は驚いて一瞬真っ白になってしまった。
「アキ?アキ?」
僕は四つん這いのままアキのところにいく。
アキの涙はきれいだった。悲しい涙じゃない。
その表情は、僕の心を包む。あまりに優しい顔で僕を見上げるアキの目をみて確信した。
アキは僕が好きなんだ・・・。
「なんで泣いてるんだよ、アキ。僕まで泣きそうだ。」
なんとか微笑もうとしたけどうまくいかない。僕はアキの頬に手を伸ばす。
「アキの涙を都合よく解釈しちゃうよ。」
アキは僕に言ったんだ。
「俺にキスしてくれ。そしたら。俺は信じることができる・・・。」
この3年間の自分が氷解していくような感覚。
アキが信じるために必要なら、なんでもするよ。
キスなんて、お願いされなくたって、僕が欲しい。
僕はゆっくりアキの唇に想いを重ねた。
アキのこぼれそうな笑顔は涙で光っていた。
こんな目で僕をみてくれるのなら、何もいらない。
「俺は、お前をずっと、愛していた・・。・」
僕の瞳から、幸せを形にしたように涙が落ちた。
僕は人を愛すること、愛されることがどういうことなのか
初めて知った・・・。
僕の予感は当たった。
アキと僕は特別だったんだ・・・。
fin
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
47 / 48