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慣れ
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「牧野、あのさ。」
突然箸を置き始めた日坂。
「何だ。」
「あのさ……「おおー日坂! 何でお前こんなとこいんの?」」
日坂が何か言おうとしたのも束の間、知らない奴が俺たちのテーブルに近づいてくる。
「明ぁぁぁあ!」
きっ、とそいつを睨む日坂。明と呼ばれるそいつは、茶髪で念入りにセットされた髪。左耳にだけピアスをしていた。見るからにチャラい。俺は、そいつを見て怪訝な顔になる。それに気づいたのか、日坂はくるっと俺の方へ向き直してこう言った。
「ごめん、牧野に待ってもらってて申し訳ないんだけど。先に教室に行ってて。」
何かを我慢しているような笑顔を向けられる。もともと、いつも一人でずかずかと教室に戻っていたので、コイツに謝られる筋合いもないのだが。
「分かった。」
俺はがたんと椅子を引いて、お盆を持って立つ。
「お、じゃな! えっと……「牧野。」ああ、牧野。」
明は、俺の方を見てそう言った。俺はペコリと軽く礼をしたあと、その場から離れた。
「なあ、最近俺らとの付き合いが悪いと思ったら、あんなオタッキーと友情ごっこ? どうしたんだよ日坂。」
結構離れた距離にいるそいつの声が、何故か聞こえてしまう。俺は、その言葉にショックを受けるよりも納得をしてしまった。
同感だ。
俺と日坂とじゃ、生きる世界が違うのだ。
だが、次に日坂の言葉を聞いたとき、俺は驚いた。
「お前にアイツの良さなんて分かんねーよ。」
珍しくムキになる日坂。俺がさっき座っていた場所をふと見ると、日坂と目が合った。気まづくて、俺はすぐに目を反らせて売店を出た。
俺の、良さ?
日坂とは出会ってからまだ半年も経っていない。まともに会話もしない。一方的にあっちから近寄ってきて、話しかけてくる。最初はうるさいと思っていたが、慣れてしまえばBGM扱いに出来る。アイツには友達も沢山いるのに、どうして俺の方へ来るのか、さっぱり分からない。
最初は、クラスの奴全員と仲良くなるためかと思ったんだ。つまり、仲良くなっていないのは、この俺だけで。俺と仲良くなれたらコンプリート! みたいな。ゲーム感覚かなっとも考えてみたこともあった。けれども、様子を見ている限りそんな感じじゃなかった。
階段を、一人登る。
アイツがいないと、静かだな。
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