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友達になって!
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時々、日坂はおかしなことを言う。
「やっぱり、綺麗だ。」
その日も、日坂は俺を見てそんなことを言っていた。意味が分からない。
俺と日坂が親しくなる必要はどこにもない。俺はひとりでも十分に生きていける。困ったときはそれなりに、どこかのグループに入れてもらうことも出来る。いつも一人だけれど、それで困ったことはない。
もし、日坂が俺のことを可哀想な奴だと思って接しているのならば、やめて欲しい。余計なお世話だ。
朝は誰よりも早く来て一人の時間を楽しむのが日課だったのに、とうとう今日の朝日坂が来た。いつもはギリギリに来るくせに。俺は、構わず小説を読み続けようと思った。だから、日坂から挨拶されても無視をした。自分の時間を削られるのは好きではないし、何より日坂に俺みたいなつまらない奴と話のは、時間の無駄であるということを知って欲しかった。
だが、日坂は俺の前の席の陽向君の椅子に座った。そればかりか、俺の読んでいる本の近くに顔を持ってくる。当然、日坂の顔が視界に入ってきて、読書に集中できない。話しかけられて、それに答えていく。淡々と答えるだけの俺と話して続くわけがない。思っていた通りにすぐ会話は終わった。俺は栞を挟んでいたページを開いて再び読書を始める。この際、日坂の視線なんて気にしていられない。
「やっぱり、綺麗だ。」
俺は、お前が分からない。
*
昼食の時間になり、俺は食堂へと向かう。やはりついてくる日坂。ベラベラと何かを話しているが、俺はその話を聞いてなどいない。日坂もそれに気づいているはずなのに、やめようとしない。
変なの。
今まで、俺と仲良くしようとした奴は皆この段階で離れて行っていた。日坂が離れていかないのが不思議で堪らない。
「牧野。」
俺が定食Aを食べようとしていると、突然日坂に名前を呼ばれた。
「何?」
「あのさ、ずっと言おうと思ってたんだけど。」
照れくさそうに箸で野菜炒めを突っついている日坂。
「行儀が悪い。」
「あ、ごめん。」
直ぐに箸が置かれる。
「別にいいけど。」
「うん。……じゃなくて!」
「何?」
「友達になって!!」
「え?」
「俺と友達になって!!」
俺は、箸で掴んだ里芋を小鉢に落としてしまった。
友達に、なって?
「意味が、分からない。」
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