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俺だけが知っていればいいこと 2
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牧野が目の前にいない。
「一人で飯を食べるのも久々だな。」
牧野と出会うまでは、それこそ明たちと一緒に飯を食べていた。二年生になってからはずっと牧野のあとを追って、一緒にご飯を食べていた。初めて勝手に一緒の席に座ってご飯を食べたとき、牧野はすごく驚いた表情をしていたっけ。それでも、何も言わずにご飯を食べ続けていたところを見ると、俺は嫌われてはいないのかもしれない。
自分自身のポジティブな考えに嘲笑ってしまう。
一人でもそもそ食べていると、また明がやってきた。
「よう、日坂。」
「今、一人で飯を食いたいんだけど?」
苛立つ俺を無視してさっきまで牧野が座っていた場所に明が座る。
「あれ? あの根暗は?」
「根暗じゃない。牧野だ。」
一々癪に触る。
明は食堂の中をチラリと見たあとにニヤリとする。
「へえ。」
「なんだよ。」
「嫌われたのか?」
「お前には関係ないだろ。」
「うわー冷たいな。前まで一緒に楽しくつるんでた仲じゃん。」
「俺は顔が広いんでね。誰とでも楽しくつるめるんだよ。」
「あっそ。じゃ、牧野ともそんな感じか。」
「なんだよ、なんかホッとした顔して。」
「いや、だってよ。あんな根暗と本気で友達になろうとかっていう考えしてたらマジで俺笑いすぎて腹痛くなるもん。」
「は?」
「前にも言ったけどさ、お前とアイツとじゃ住む世界が違うんだよ。お互い疲れるだけだからやめとけやめとけ。」
へらへらと笑いながら明はそう言った。俺は、耐え切れなくなった。
「お前さ、牧野の何を知ってんだよ、本当に。これ以上俺の前に現れんな。ムカつく。」
この前同様、俺は定食を急いで掻き込んで食堂を出た。
なんで皆、分からないのだろうか。
いや、分かってもらわなくていいのだ。
俺だけが知っていればいいのだから。
俺は、牧野と友達になる。
牧野の笑顔が見たいから。牧野の優しさに触れたいから。
牧野が何を考えてるのか知りたいから。
そのためなら、俺も努力を暇ない。
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