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教室を入って、君の席へと目を移す。しかし、そこには君がいなかった。牧野に行くあてなどないと思っていた俺は、教室にいるとばかり思っていたので焦った。
「なあ、牧野見なかったか?」
思わず、すぐ近くにいたクラスメイトに聞いていた。
「おう、日坂。牧野? 昼休みお前と教室を出てったきり戻ってねーみたいだけど?」
「ああ、分かった。サンキュ。」
俺は、すぐに教室を出た。
どこにいる?
どこなんだ?
いつも俺ばかり一方的に話していて、牧野の話なんて聞いたこともない。だから、牧野のことなんて全く知らないのだ。牧野が行きそうなところも全く検討がつかない。俺が知っているのは本を読んでいる姿とあの優しい一面のみ。
本……
もしかしたら……
俺は急いで図書室へと向かった。
*
「失礼します。」
急いで扉を開けたものだから、静かな図書館に響き渡る扉のぶつかる音。たくさんの視線を集めてしまう。でも、そんなことに構っている余裕など今お俺にはこれっぽっちも無かった。いそいで図書室内を見渡す。
牧野、牧野、牧野……
ずかずかと、急ぎ足で室内を歩き回る。
と、途端に窓際の方から手が伸びてきて俺の腕を掴んだ。
「え?」
そいつの方を向く。
「騒がしくて迷惑だ。ちょっとは礼儀を弁えろ。」
思わず、ホッとしてしまった。
「牧野……ここにいたんだな。」
牧野は目を見開いた。
「俺を、探していたのか?」
俺は縦に頷いた。
「何故……」
眉間に皺が寄り始めるのが見える。
俺の腕を掴んでいた手が離れ、牧野は席を立った。
「行くぞ。」
「え?」
「ここじゃ、皆の迷惑になるだろうが。」
そう言って、俺よりも前を歩く牧野。俺はそのあとをただ付いていくだけしかできなかった。
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