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今日が明日に変わって明日が今日に変わった 4
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うわ、俺本当に牧野と一緒に帰っている!
「どうした、日坂。」
一人心の中で喜んでいたつもりが顔に出てしまっていたらしい。にやけている俺の顔に向かって牧野が思いっきり怪訝な目を向けていた。
「い、いやだな。なんでもないよ!」
俺がそう言えば、なんでも無かったかのようにまた前を見つめ直す牧野。
今、俺たちは下校中だ。約束を律儀に守ってくれた牧野は、放課後俺の机に向かって「帰るぞ。」と言ってきたのだ。その時近くにいた前の席の奴がギョッとした顔をして牧野と俺とを交互に見ていた。俺は得意気な笑みをそいつに見せてから席を立った。
教室を出る際に「まじかよ。」という声がぼそりと聞こえたが、それは俺を更なる優越感に浸らせた。
「日坂。」
「な、何? 俺また変な顔してた?」
今度は無表情で俺の顔を見つめてくる牧野。俺は慌てて真面目な顔をしてみせた。
「いや、そうじゃない。ただ、本当に日坂って背が低いんだなって思っただけだ。」
「は?」
「悪い。」
少しだけバツが悪そうにしながら、俺から視線を外した。
「牧野ってさ。」
「なんだ?」
俺も悔しくて牧野の名前を呼んだ。だけれども、ただ呼んだだけで特に話す内容もなかった俺。
「牧野って、背が高いよな。」
上にある顔をチラリと目だけで見上げると、少しだけ目が合って逸らされた。牧野は目を合わせるのが苦手らしい。
「牧野って、人見知り?」
不意にそう聞くと、目を見開いて驚かれた。
「多分、人見知りだ。」
ちょっとだけ困った顔。
「そっか。」
その顔を見つめて、俺は優しく微笑んでやることしかできなかった。
俺にもっと勇気があれば「俺が人見知りを直してやる!」とか何とか言えたのだろうが、生憎俺にはそのような勇気がなかった。そして、何にしろ牧野に嫌われたくなかったのだからそんな一か八かのようなセリフは言えなかった。
でも、欲だけはあるよ。
「牧野、俺も人見知りだ。」
「日坂が、人見知り?」
「そう。」
上にある横の顔、緩む口。
「そうは、見えなかったな。」
「だろ?」
俺の口元も緩んでいるはず。
こうやって、少しずつでもいいから牧野の隣にいたい。
これが、俺の欲。
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