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今日が明日に変わって明日が今日に変わった 5
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「公園、着いたけど。」
公園の前で歩くのを止めた牧野が、俺を見てそう言った。
「え、うん。そうだね。俺、こっちだから。」
取り敢えず、牧野の家とは逆方向の道を指差した。これで俺が遠回りをしてまで牧野と帰っているということはばれずに済むだろう。
「そうなのか。」
だが!
俺は甘かった。
「え、ちょっ、牧野!」
牧野は俺の指差した方向へと歩を進め始めたのだ。
「どうした、日坂。」
「い、いや、その。」
やばい、どうしよう。引き止めてしまったけれども、俺は牧野の家をまだ知らない設定だ。回らない頭をフル回転させる。
「ま、牧野の家も、そっちなの?」
苦し紛れに出た言葉はそれだけだった。牧野は、俺を見て横に首を振った。
「送って行ってやる。」
ガシリと俺の腕を掴んで突き進む牧野。
やばいやばいやばい。
このままじゃ、バレる!
その時だった。名案が浮かんだのだ。
「お、俺、この先にあるスーパーで買い物頼まれてるから、今日は牧野の家まで歩くよ!」
慌てながらそう言うと、ピタリと止まる牧野。
「そうか、分かった。」
そして、元来た道へと戻り始める。
「牧野!」
「なんだ。」
「手!」
俺は掴まれていたままの手を見る。牧野もつられて見ると「あっ。」と言って、俺の腕から手を離してくれた。
「その、悪かった。痛かったか?」
しばらくして、少しだけ前を歩いている牧野が俺に話しかけた。
「う、うん。ちょっと。」
俺の馬鹿!
せっかく仲良くしてくれようとしてんのに!
一人悶えていると、いつの間にか止まっていた牧野の胸に当たった。
「あ、ごめん。俺ぼうっとしてた。」
少し上を見上げると、優しく微笑みながら俺を見つめている牧野の顔があった。
え?
「日坂は、面白いな。」
そう言ったかと思うと、また前を向き直して歩いてしまう。
さっき、なんて?
面白い?
どこが?
俺は牧野の顔に見とれてしまったのと、意味不明な心臓の高鳴りのせいで何も訊けなかった。
顔が、熱い。
「じゃ、俺の家はここだから。」
「お、おう。」
暫らくして、牧野の家にたどり着いた。
牧野の家は、他の家と比べると小奇麗だった。玄関へと歩き出す牧野の背中を俺は、ただ見つめた。
「日坂、また明日。」
玄関の扉を閉める間際にふわりと微笑まれてそう言われてしまい、俺の頬はまた熱くなった。
本当、君って綺麗。
俺は、スーパーには寄らずに元きた道を歩く。
いつもは通らない道。
でも、さっき君と歩いたばかりの道を一人思い出しながら歩くのも悪くはない。
「あーあ、お腹減ったな。」
口を緩ませて、俺は一人ぼそりとつぶやいた。
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