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危機 4
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え?
三毛猫のオスって、すごいの?
なんで?
しかも、それで牧野から俺が猫好きかどうか疑われてるんだけど?
どうして?
俺が作り笑顔で固まっていると、牧野は呆れた表情をしてため息を吐いた。
「三毛猫のオスは、希少価値が高いんだ。三毛猫のほとんどはメス猫で、オスが生まれても生き残れるのはそういないらしい。」
「へえ、そうなんだ。」
「猫好きなら、知ってると思ったが……」
少しだけずれた眼鏡をクイッと指で上に上げて、俺を見る牧野。
ああ、そういうことだったのか。
知ってるふりをしていれば良かったな。
「ああああ、ああ、俺は猫好きだけど、そこまで詳しくは知らないんだ。ただ、そこら辺にいる野良を見て可愛いと思う程度だし。」
笑って誤魔化せば、牧野は残念そうな表情をした。
「そうか……それなら、仕方がないな。」
心なしか、そう言った時の牧野の顔を見て胸が苦しくなった。
「ごめん。」
気づけば俺は牧野に謝っていた。
牧野はというと、それを聞いて突然吹き出した。
「なんで日坂が謝るんだよ。別に、好きの基準は人それぞれだろうが。」
可笑しそうに俺を見る牧野。
好きの基準……か。
「う、うん。そうだね。」
俺は君が笑う姿を見ているのが好き。
その後に穏やかな表情を俺に向けてくれるのも好き。
猫よりもずっと好き。
「日坂。」
名前を呼ばれて我に返る。
「なっ何?」
「今日見た三毛猫がオス猫だったらいいな。」
ああ、やっぱり、この穏やかな表情
落ち着くな。
教室の扉に手をかけながら俺はそんなことを考えていた。
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