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危機 8
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俺は走った。牧野の顔を見れなくて、その場から立ち去りたくて逃げるように走った。
「ぐふあ!」
が、途中で誰かにぶつかってこける。
「日坂? お前大丈夫かよ。」
未だに俺が痛がっていると、手を差し伸べてくれたのは……
「明。」
俺が差し伸べてくれた手を取ると、ぷっと笑う明。
「お前、今間抜け面してっぞ。」
「あ、ああ。悪い。今、急いでて。」
「何だ? 今日はやけに素直じゃんか。」
俺は立ち上がって明に礼を言って、どこかにまた行こうとした。だが、行けなかった。
「おい、なんのマネだ。」
明が、俺の腕を握って離さないのだ。
「日坂、今からどこ行くき?」
ニヤニヤしている顔が俺にそう訊いた。
「何故お前に言わないといけない。」
俺が睨むと、さらに笑う明。
「おー怖い怖い。睨むなよ。俺も今からサボろうと思ってただけだって―の。」
「は? そんなら独りでサボれよ。俺を巻き込むな。」
「いいじゃん。独りじゃつまんないし。」
面倒だったので、俺は明と一緒にサボることにした。
「言っとくけど、行くあてないから。」
明にそれだけを告げると、ニコニコしながら俺のあとをついてくる。本当に、コイツは何なんだ。
「日坂、いいこと教えてやろっか?」
「何だ。」
「今、屋上の鍵壊れてるらしいぞ。」
少し考えて、俺は言った。
「じゃ、そこでいいや。」
俺たちは屋上へと階段を登った。
今頃、牧野はどうしているだろうか。本を、読んでいるだろうか。
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