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危機 9
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どうして俺は、明に手を引かれているのだろうか。
どうして、俺を導いているのが明なのだろうか。
「ついたぜ。」
そう言った明が、扉を開ける。
長く開閉をされていなかったからだろう、扉の軋む音がする。
開かれた扉の向こうには、太陽に照らされている広い床が見える。
「日坂ってさ、屋上は初めてだっけ?」
未だに俺の手を離さない明が、俺を見ている。
「初めてだけど、それが普通だろ。」
「そっか。」
明は扉を閉めて、俺の手を離した。
「適当なところに座ろうぜ。」
伸びをしている明に付いて、隣に座ってみる。
屋上には誰もいない、ただ登校をしている生徒たちの姿が下に見えるだけだ。それは当たり前のこと。なぜなら、ここは立ち入り禁止場所で学校の一番高いところなのだから。
そう、屋上なのだから。
「なあ、日坂。」
「何?」
「お前、変わったよな。」
変わったって、何がだろうか。
俺はとなりで横になり始めた明を見つめる。
「全部だよ。雰囲気とか、そんなものが変わった。」
「そう、かな?」
「お前さ、女子からはモテモテで誰とも気軽に話して誰とでも仲良くなるタイプだったじゃん。」
「まあ、ね。」
「俺も”誰でも”のひとりだというのはわかってる。でもさ、突然あの根暗に執着しやがって……」
「え?」
両手で顔を隠しているため、明の顔は見えないがどことなく苦しそうな声が聞こえる。
「あー俺さ、お前とアイツが話してんの見るの、ムカつくんだ。」
どうしたんだろうか、いきなり。
「お前が楽しそうに話してる相手がアイツってのが、俺はムカつくんだよ。」
ただ黙って見つめる俺に、言いなおす明。
「ムカつく?」
「ああ。とても。」
「なんで?」
俺の問いに、明は「あー、もううぜー!」と言いながら両手を顔から離した。それと同時に見えるのは明の今にも泣きそうな顔だった。
「す――だよ。」
か細い声。
「え? なんて?」
眉根がぴくりと動いた。
「だから……お前のことが、俺は好きなんだよ!」
まじまじと俺を見る目。
固まる俺。
「好き?」
「ああ、恋愛対象として好きなんだよ!」
「え? でも、俺男。」
「んなの知らねーし! 好きなもんは好きなんだからどうにも出来なかったんだよ。」
明が、俺のことを恋愛対象として好きだなんて、想像したことがなかった。
「えっと、ごめん。俺……」
「アイツのことが好きなんだろ?」
「え?」
「根暗のこと、好きなんだろ?」
俺が、牧野のことを、好き?
どうして?
俺もアイツも男だぞ?
俺は笑える気分じゃなかったけれど、無理やり笑顔を作る。
「ばーか。俺は男だぞ? 牧野はただ友達になりたかっただけだってーの。」
明の真剣な眼差しが、逸れない。
「お前、嘘つくとき笑うよな。」
返ってきた明の言葉は思いがけないもので、俺は戸惑った。
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