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お宅訪問 3
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しばらく、牧野に抱きしめられていた俺。
だが、あまりにも長くずっとその体制でいたため、俺は耐えられなくなってしまった。
「牧野……」
思ったよりっも自分の声が震えていた。それに驚いたのは俺だけではなかった。牧野も、俺の首から顔を外して様子を伺っている。
「どうした?」
「えっと……その……」
「ん?」
いつもより甘い空気。
それは、牧野が発している低くて若干掠れている声のせい。
そして、俺は……
「ごめん牧野!!
俺、足がしびれた!!!」
勢いよく牧野から離れて足を崩した。というか、崩れ去った。
そう、俺だって礼儀を弁えている。だから、ずっと正座をしていたのだ。だが、慣れないことはそう長くするものじゃない。現に今、俺の足は感覚を失った。
一人涙目で震えていると、さっき突き放した牧野の方から、笑い声が聞こえた。何事かと思い、振り返ると、牧野が口を押さえて大きく笑っていた。
牧野がこんなに笑っている姿は、初めて見た。
「おいおい、人が苦しんでる時にそんなに笑うなよな!」
「ああ、悪かった。だけど、お前……ははっ」
「牧野!!」
「だって……ぐはっ」
牧野に笑われたせいか、正直顔から火が出そうなほど熱い。というか、顔だけじゃなくて耳も熱い。
じとっと、牧野を睨みつけると、それを見た牧野は深呼吸をして素の顔に戻った。
「ごめん、日坂。」
そして、また、大きな手で俺の頭を撫でた。
「俺、いつも一人だったし、誰かと話すにしても目上の人とばっかりでさ、なんかこう、お前みたいなのと一緒にいるのってすごく新鮮なんだ。」
拗ねた子供をあやすように、彼は言う。
「新鮮で、すごくいい。」
なぜだか俺は、さっきのとはまた違うもので顔が熱くなった。
牧野って、最初は大人ぶってて変な奴って思ってたけど……お前も俺と同じなんだなって思った。教室でも、そんな風に笑って、温かい目でいろんな人と話していけば、牧野は人気者になれるだろうに。
「新鮮とか言うなよ。お前も、俺も一緒だろうが……」
頭を撫でられながら、俺は牧野にそう言った。
勝手に自分で隔たりを作ってんじゃないよ。
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