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恋人…恋人…恋人っ?! 6
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牧野と恋人になって一日目だというのに、何故だろうか。放課後は牧野から一緒に帰ろうと誘ってくると思っていた。けれども、それは違った。今牧野の机には井成がいる。俺はそれを横目で見ながら帰る支度をしている。といっても、すでに帰る支度は終えている。牧野から言い出して来てくれないかと願ってしまう俺は、何度も引き出しの中のものを出し入れしている有様だ。
こうしている間にも、井成は楽しそうに牧野に話しかけている。牧野はそれに応えるかのように少しだけ微笑んでいる。俺が初めて話しかけた時とは大違いだ。微笑んでくれるどころか、見向きもされていなかったのに。
もしかしたら、俺なんかよりも井成と一緒にいる方が牧野は楽しいんじゃないかとか、俺は邪魔な存在なんじゃないかとか思ってしまう。
ああ、俺らしくないな。
対人関係でこんなにくよくよ悩んだことなんてない。それなりに仲がいい友達はたくさん作ってきた。だが、特別は作ってこなかった。だから、嫉妬することなんて無かったのだ。無かったのに、今、嫉妬してしまっている。
「大人気ないな。」
ぼそりと呟いて、力なく笑ってしまった。
「なあなあ、日坂!」
自分の席にずっといたら、井成が荷物を持ってやってきた。後ろには牧野がいる。
「今日、俺も一緒に帰らして!!」
両手を顔の前で合わせてお願いと許しを乞う井成。何だよ、牧野はまた許したのか? そもそも、井成の後ろに付くんじぁねえよ。ふつふつと湧き出てくるどす黒い何か。だが、俺の勝手な嫉妬で牧野と友達になりそうなこいつを突き放すわけにもいかなかった。
「……わかったよ。」
俺がそういえば、嬉しそうにはしゃぐ井成の後ろで冷たい表情をしている牧野が見えた。
何でそんな目をするんだよ。俺の存在が、邪魔なのか? 井成と一緒に帰りたいのか?
驚いたことに、井成は牧野の家とは正反対の場所にあった。つまり、俺の家のご近所さんだったのだ。校門を出て、牧野が俺の家の方向に歩を進めたため疑問に感じ、ちらりと牧野を見れば「送っていく。」の一言。
何なんだよ。俺は邪魔なんじゃないのか? そう思いながらも、熱くなる顔を俯かせた。横で井成が「牧野の家真逆なんだな。」と笑っているのが聞こえる。
「俺の家もうすぐ近くだから、ここでいいよ。牧野も帰りが遅くなるといけないし。」
結構な距離まで送ってくれる牧野が心配になったということと、牧野と井成が一緒にいるのを見たくないということで、俺は牧野にそう言った。牧野は心配そうに俺を見た。
「大丈夫だって。小学生じゃないんだから。」
笑ってこう言うと、牧野はしぶしぶ「また明日。」と言って来た道を戻っていく。
これから井成と二人で帰るのか。井成が興味あるのは牧野みたいだし、俺とは仲良くはしてくんないかもな。
ちらりと井成を見ると、井成も俺の方を伺っていた。
俺が先人を切る。
「あの……さ。」
「どうした?」
その時の井成の顔は優しかった。だから、嫌われていないのだと思った。
「牧野と話してみて、どう思った?」
勇気がなくてありきたりのことを問いかけてみる。
「んー。いい奴なんじゃね?」
ニッコリと返され、俺は次に何を話そうか悩んでしまった。
「じゃ、今度は俺から質問していいか?」
「何?」
「メアド、教えてくれない?」
「は? 牧野のメアドなら俺は知らねーけど。」
こう問いかけられて初めて自分が牧野の連絡先を知らないという事実を認識した。自分で言っといて、虚しくなる。だが、次の瞬間聞こえてきたのは井成の笑い声だった。
「違うよ、日坂のメアド、教えて。」
「え?」
「嫌か?」
眉を八の字にさせてそう問いかける井成。嫌ではない。むしろ、牧野だけでなくて俺とも仲良くしてくれているのはありがたいと感じた。
俺と井成はその日互の連絡先を交換し合って、それぞれの道へと帰った。
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