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俺の恋人 2
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食堂までの道のりが、今日は遠く感じられた。日坂と二人で向かっているときはあんなにもあっという間だったというのに、一人違う奴がいるだけでものすごく遠い。いつもは日坂が俺に話しかけてくれるのに、今日は井成がベラベラと話し出す。
ほら見ろ、誰にでも優しい日坂がつまらなさそうにしているじゃないか。
そればかりではなく、井成は日坂の頭をガシガシと乱暴になで始めた。それを見て俺は怒りがこみ上げた。俺でも一度しか触れたことのないそこ。恋人である俺が中々できないことを、こいつは意図も簡単にやってのけた。それが許せなかった。また、日坂がその手を払わなかったことにも苛立った。
俺以外の奴に、気安く触らせてるんじゃないよ。
俺の中の醜い感情が高ぶる。
「牧野、今日は何にすんの?」
ハッと我に返った。食堂で食べるものを選んでいた時に、日坂からそう聞かれたからだ。朝聞いた声だというのに、俺に向けられて発せられたのがすごく昔のことのようだ。直接日坂に話しかけられて胸が踊っている自分がいる。
「定食B」と返事をしたあと、顔に出ないようにするので精一杯だった。しかし、割って入って来た井成の声に、二人きりではないという現実に引き戻される。
「へー定食B何だー和食だな。何か、イメージ通り。んで、日坂は何頼むの?」
せっかく日坂が俺に話しかけてきてくれたのに、その邪魔をしてくれるなよ。
「日坂は、Aランチだよ。」
気づけば、いつの間にか自分の口がそう答えていた。ムカついた気持ちのまま、ちらりと日坂を見る。日坂は目を見開いていた。
「へー日坂らしいな。俺もAランチにしようっと。俺、二人の分まで頼んどくから席を取っててよ。できたら呼び行くし。」
井成がカウンターの方へ歩き、俺と日坂は埋まりそうになりつつある食堂の席へと歩き出す。
やっと、二人っきりだ。
「日坂。」
俺は、日坂に確認したいことがあった。
「ん、何?」
「これでも、井成と友達になれって思うの?」
俺もお前も二人でいられる時間が減ってイライラしている。もういい加減、友達を作れって言ったことを後悔していると言って欲しかった。俺だけを見ろとか、そんな言葉をかけて欲しかった。それなのに……
「うん。」
日坂の返事に、俺は悲しくて、寂しくなった。
「おい、二人共出来たって!」
井成に呼ばれて頼んだものを取りに行く。
席についた後、日坂は俺の方を見てくれなくなった。井成だけが楽しそうにご飯を食べている、そんな状況だ。俺ばかりがお前を見ている。
意地を張らずに、本音を吐いてくれはしないだろうか。
思いを明かしてくれない恋人に、虚しさを感じた。
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