アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
足りないもの 7
-
どうしようか。朝、あんなことがあってから牧野とは話し辛い。井成はまだ容態が良くないのだろう。教室には戻ってきていなかった。
”ブブ、ブブ”
昼休みになって、カバンの中に入れていた携帯が震える音が鳴る。学校に携帯は持ち込み可だが、音は鳴らしてはならない。そのため、マナーモードにしているのだ。俺は、カバンを開いて携帯の画面を見る。どうやら、井成が俺にメールをしてきたようだ。
”やっと体調が良くなったみたい。朝は心配かけてごめんな。よかったら、一緒にご飯食べようぜ。”
はあ……。
そうだよな。井成は俺たちの事情なんて知らないんだから、これも普通なんだよな。
俺はメールの内容を見て頭を悩ませた。井成とご飯を食べるのは別に嫌ではない。だが、牧野を取られた感じがして胸がモヤモヤする。それ以上に、今この状況で牧野にこのことを伝えるのは非常にまずい。
牧野から見たら……
朝、俺と井成が手を繋いで登校しているのを目撃。教室に一人先に行くも、二人が来ない。
朝のHR直後、真剣な面持ちでやってきた……って、ぜってー勘違いされてるよな! おまけに事情を説明しようとしたら「聞きたくない。」と突っぱねられたし。俺がもし牧野の立場でも同じことをしていたと思う。
それでだ、俺が今から「井成と飯食おうぜ!」なんて言ってみろ? 牧野ブチ切れだよ!
かと言って、普通に仲良くしてくれる井成に「無理」なんて言えるか? 言えねーよ! 牧野を取られる気がしてしまうのは、俺が牧野を好きだからで、実際はそうでもないはずだ。だって、井成は俺ともこうして仲良くしてくれている訳なのだから。もしかしたら、俺たちにとって一生の親友になるかもしれねーってのに、それなのに冷たくなんてできねーよ!
苦渋の決断をした俺は、牧野の席に向かってずかずかと歩き始める。何事かと俺を見てくる牧野。
「牧野、悪い。すぐ戻ってくるから、先に食堂に行ってて。」
要件を伝え、俺は保健室へ走った。
「お、おい! 日坂!」
牧野が俺の名前を呼んでいるのも気づかずに。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
55 / 130