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足りないもの 9
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息を切らしながら食堂へ向かったというのに、そこに牧野はいなかった。なぜなのかは知らない。もしかしたら、教室にいるのかもしれない。今度は教室へと走る。
速く、もっと速くこの足が走れれば、今すぐ牧野に会えるのに――
その思いも虚しく消えっ去っていった。牧野の席に本人がいない。
どうして?
牧野は、俺に愛想が尽きてしまったのか?
そんな……
教室のドアで立ち止まっていると、迷惑そうな顔をしてとある男子生徒が教室から出ようとしていた。
「ねえ、牧野見なかった?!」
俺が突然そう問うと、一瞬睨まれたが素直に答えてくれた。
「牧野は、今日の昼委員会の集まりで多目的室に行ったよ。」
「え?」
「は? お前さ、最近牧野と仲良くしてるくせに知らねえの? 牧野、このクラスの美化委員だろ? 昼休み終わりくらいに帰ってくるんじゃねーの?」
「……え、ああ。そうだったんだ。ありがとうな。」
ドアから退くとスタスタとそいつはどこかに行ってしまった。
アイツ……牧野はそんなこと一言も言ってくれなかった。俺に伝えてくれてたってよかったじゃないか。なんだよそれ。こっちはわざわざ井成に借りを作ってまで牧野と二人で昼食を取って、仲直りしようと思っていたのに。今更、井成のところに行って一緒に食べてもらうことはできなくて、一人また食堂へと戻ってご飯を食べた。寂しさを紛らわそうと、いつも牧野が食べる定食を選んで食べる。食べ慣れないそれは、少しだけ俺の好みとは違っていて、美味しいけれども違和感がある。
一人で食べる飯って、寂しいもんだな。
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