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すれ違い 5
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俺と牧野の間に突如現れた井成というクラスメイト。俺が余計なことを言ったために、こんな状況になってしまっているとも考えられることで。牧野は俺と井成が仲良くしている姿を見て嫉妬するって言ってくれたけれども、それは俺だって同じだ。本当は、牧野が井成を家に誘ったことについても、少し嫉妬している。ここは牧野の家だし牧野の部屋だというのに、俺は自分だけが招かれていいような場所だと思ってしまっていたんだ。
あの本だって、俺には何が書いてあるかわからないけれど、井成と牧野は知っている。俺には無い二人の共通点を見つければ見つけるほど、本当はすごく心配になるんだ。
牧野が、俺よりも井成を選んじゃうんじゃないかって。
黙ってお茶を飲み続けるということは、中々できないことだと初めて知った。牧野は不安そうな顔で俺を見ているし、井成はニタリと余裕の表情で俺を見ている。俺は沈黙を通すことができなくて、マグカップを机に置いて口を開く。
「牧野、あとでちゃんと言うから。」
チラリと牧野の方を見ると、唇を噛み締めつつもわかったと返事をしてくれる姿があった。別に俺は、井成と二人で遊びたくて約束したわけじゃない。それは、しっかり分かって欲しいし、信じて欲しい。
井成は、少しつまらなそうな表情になってその場からゴロンと床に寝っ転がった。
「井成っ、お前リラックスしすぎじゃね? ここは牧野の家だぞ?」
見ていてだらしない。そう思った俺の注意も虚しく体勢は変わらなかった。
それどころか、何かを思い出したかの様な声を出し始めた。
「写真!! 牧野! ここに一年の時の全体集合写真あるか?」
牧野は呆れたような表情になり、その場から立ち近くの本棚のところで立ち止まる。そして、一冊の本を取り出した。どうやら、それはアルバムらしい。
机の上にドサりと置かれ、井成の言う目的の写真のページのところが開かれる。
「これだろ?」
ひどく覚めたような目で井成を見る牧野。井成はそれもお構いなしに興奮している。
「そうそう! これこれ! 日坂に見てもらいたくてさ!」
目をキラキラとさせてこっちを見るのはやめて欲しい。ほら、牧野がまた眉間のしわをより一層深く刻ませているじゃないか。
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