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すれ違い 6
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置いてきぼりにされて悲しい、そんな表情になる牧野に俺は軽く説明する。
「えっと、朝の事なんだけど、井成と俺が同じクラスだったって話をしてたんだよ。俺は井成のことすぐに出てこなかったから不思議に思っていたら、井成がイメチェンしたって言うからさ。」
井成の方を見れば、満足げに微笑んでいる。
「ふーん。」
興味のなさそうな牧野の声が隣からした。
全体集合写真には、俺たちの同級生が全員写っている。俺たちの学校は規模がそんなに大きくないから、一学年も対した数にはならない。ひとクラス40人弱で、5クラスある。それくらいの規模だ。
俺が前にいたクラスは1年4組。4組がいるところを集中的に眺める。
「日坂だ。」
真っ先に牧野が当時の俺を見つけて指を差した。
「恥ずかしいな。一年前とか何か自分が初々しく見える。」
「そうか? 今も昔もそこまで変わっていない様に見えるが。特に背とか。」
今日初めての牧野の意地悪な微笑み。言われていることは俺の気にしていることなのに、カッとなるどころかドキっとしてしまう。
「あー本当だ! 懐かしいな。そんで、その右横にいるのが俺だよ。」
井成の声にハッとなり、急いで視線を牧野から写真へと移した。指差されたその人物を見て驚いた。
「これ、井成?」
驚いてつい訊ねてしまう。
「そうだよ。だから言っただろ? 同じクラスだった奴等全員気づかないんだって。」
そこに写っていた井成は、真面目を絵に描いたような姿をしていた。ついつい、井成を質問攻めにしてしまう。
「この眼鏡は?」
「取ってコンタクト。」
「髪の毛は?」
「薄茶色に染めてる。今のところバレてないぜ。セットもワックス使ってやってる。」
「この頃、服装が乱れてないんだな。」
「まあね。」
写真と目の前の奴を交互に見つめる。確かに、顔は井成だ。だが、纏っている雰囲気が全く違う。
また、写真を見て、思い出した。
「お前さ、無口だったよな?」
「うん。そうだよ。」
そう、それこそ当時の井成は牧野みたいなタイプだったんだ。
それが今、こんな軽そうな男になっているというのだから、驚きだ。人間短期間で纏っている雰囲気をこんなにもガラリと変えられるものなのか?
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