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すれ違い 8
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「牧野、俺もお前みたいだったんだぜ?」
ニタリ、その言葉が合うような顔をしている井成。コイツは、何が言いたい? どうしたい?
「俺も、無口で真面目な人間だった。こんなに喋れなかったし、こんなに制服を着崩したりしたことなんてなかった。コンタクトも初めてなんだぜ? すげーだろ? なあ牧野どうして俺がこんな風になっちまったか知りたいか?」
不気味な笑みをこぼして続ける。
「日坂を見返したかったからだよ。」
目を細めてこちらを見てくるその姿を見て、喉がカラカラになってしまう。
「俺さ、初めて話してもらえたとき、嬉しかった。それから日坂を目で追うようになっていってさ。一年の時の泊まりがけの行事以来話しかけてくれるのをずっと待ってたんだよ。」
やめて。
「だけど日坂はさ、話しかけてくれなかった。」
やめろ。
「それどころかさ」
やめてくれ。
「それどころか、こいつ、クラスから浮いていた俺を見放したんだぜ?」
やめて……くれ……
「取り敢えず話しといて、自分の都合が悪くなれば簡単に見放す、日坂翔はそういう奴何だぜ?」
それは俺が一番牧野の前では言って欲しくはない内容だった。牧野の方が怖くて見ることすらできないでいる。どうしよう。牧野はこんな俺を知って、嫌いになったんじゃないだろうか。きっと牧野の中で俺という存在には、誰にでも優しい日坂というレッテルを貼られているに違いない。だからこそ、醜い自分の姿なんて知られたくない。
反論なんて以ての外、何も出来ないで空になったマグカップをじっと見つめる。
隣からは何の声もしなかった。
「へー、やっぱショックだよな? でもさ、俺はそんな日坂でも受け入れるよ。」
は? 何を言っているんだ、こいつ。
一瞬で目の前の井成の顔を見ると、挑発的な表情をして牧野の方を見ていた。
「俺さ、前に牧野に言ったとおり、日坂のことが好きなんだわ。」
自信に満ちている笑み。
え? どういうことだ?
井成が、俺のことを……好き?
そして、そのことを牧野にはもう、伝えている?
困惑して、井成の視線の先にいる牧野を見てしまった。
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