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経験値の低さ 6
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「久しぶりだな。」牧野が俺よりも先に教室に入りながらそう呟いた。
「何が?」と呑気に返せば、呆れた顔で振り返ってきた。そして、何か言おうとするも直ぐに咳をしてごまかされた。何もなかったかのようにさっさと自分の席へ向かう牧野。
「え? ちょっと牧野、教えろよ!」
さっき牧野が何を言おうとしたのか気になって仕方がない俺は、牧野前の席に座ってうつむいている顔を下から伺う。
「あれ? 顔、赤い?」
ニヤリと俺がそう言うと、むっとした表情をされた。
「気のせいだ。」
頬が赤いくせに、ポーカーフェイスでそう言うものだから説得力がなかった。それでも牧野は、淡々とカバンの中の勉強道具を机の引き出しの中へと入れていく。俺は断念して頬ずえをつく。そして、その作業をただじっと見ていることにした。
「そう言えば、二人っきりで過ごす朝って久しぶりだね。」
ふとそう思い、牧野に言うと更に頬を紅潮させて大きなため息をつかれてしまった。
「え? 俺何か変なこと言った?」
牧野の顔をまじまじと見ると、目をそらされる。
「お前な……人が恥ずかしくていうのを止めたセリフを……」
口元を押さえている牧野の目は泳いでいた。
え? もしかして俺、今恥ずかしいこと……言った?
牧野の反応を見ていたら、俺まで恥ずかしくなってしまってまともに牧野を見ていられなくなってしまった。お互いに、恥ずかしくて中々次の話題をふることが出来ない。
しばらくの沈黙。
あ、そう言えば……
朝の出来事が頭に蘇る。
「ま、牧野。」
「な、何?」
少しお互いに照れながら目を合わせる。
「その、さ。」
「何だよ?」
なぜだか、牧野の喉が上下に動いた。
俺は大きく息を吸って言う。
「牧野! 俺に勉強を教えて!!」
恐る恐る牧野の顔を見ると、拍子抜けしたような表情をしていた。そして直ぐに怒られる。
「紛らわしい。」と。
あれ? デジャブ?
お互いに慣れないことをするとこうなってしまうらしい。どうやら俺も牧野も似たもの同士のようだ。それに気づいた俺は自分自身に苦笑した。
「それで?」
牧野は続ける。
「いきなり勉強を教えてとか、どういう風の吹き回しだ。」
牧野から見ても、俺はそういうふうに見えるらしい。そういうふうにとは、具体的に……不真面目な学生とか……多分そんな感じだろう。
「確かに、俺は授業をあまり真面目に受けてないよ。でも、真面目になる時は真面目になるんだ!」
「本当にどうした。熱でもあるんじゃないのか?」
いやいやいや、俺どんだけ不真面目な奴だと思われてんの?!
「熱はない!」
「そうか、まあ、バカは風邪をひかないと言うしな。いいだろう、教えてやろう。」
「お願いします! 牧野先生!……それで、牧野先生の成績はいかがでしょうか?」
腰を低くしてそう言うと、牧野は当たり前のように「学年2位だ。」と言った。予想以上の順位に俺は空いた口がふさがらない。
すごい奴と俺は恋人になった。
そう思ったのだった。
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