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お泊り 10
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古典繋がりで、今度は歴史を勉強することになった。
「牧野ー」
「何だ?」
「いい加減、休憩したいんだけど?! ずっと朝からぶっ通しだぜ? 俺、腹減ってきた。」
「人間は空腹感を感じてるくらいの方が、勉強が捗る。もう少し我慢しろ。」
淡々とメガネを光らせて言う牧野。
時計を見れば、昼の1時になっていた。
「いやいや、俺死んじゃうって。脳が栄養求めてるし。」
机にぐったりと突っ伏して牧野の様子を伺う。
「はあ……全くお前は。そんなんじゃ赤点から脱出できないぞ。」
ぐぅうううう
「日坂、腹の音で返事をするな。」
「だって、腹が減ってるんだから仕方がないだろ。」
「……仕方がない。何か簡単なもの作ってくるから、この問題を解いて待ってろ。」
そう言って、問題を俺に渡して部屋を出て行ってしまった。
部屋に一人置いてかれた俺は、机の上に置かれたばかりの問題を睨んだ。
俺の分からないところを先読みして解説まで丁寧につけてくれている、それ。普通だったら数秒で解くのを諦めるところだが、牧野が俺のためにこうやって勉強を見てくれていることを考えると、サボるどころか頑張ろうというやる気が出た。
* * *
トントントン
牧野の部屋だというのに、部屋の扉を牧野がノックしている。変な光景だ。
そいつの方を見上げると、とても優しい顔をしていた。
「日坂、頑張っていたみたいだな。」
ほら、これ。
頑張ったら、牧野は必ず褒めてくれる。怒らせると恐怖だが、努力していれば認めてくれる。それがとても嬉しくて、もっと頑張りたくなる。
俺が解いたプリントをちらりと見て、目で確認していく牧野。赤ペンの音は聞こえない。そのため、どれが合っているのか間違っているのか、分からない。
じっとプリントを見守っていると、フッと微笑まれた。
今までの俺たちの流れからして、これはよくない兆候だ。
お前、俺が丁寧に教えているというのに、何を聞いているんだ? とかなんとか言われそうだな。
身構えていると、牧野は俺の頭にぽんと片手を乗せた。
「へ?」
ギュッとつむった目を開くと、手が俺の髪をわしゃわしゃとかき混ぜるように乱暴に動かされた。
「さっきの古典と結びつきのあるところばかり問題として出していたんだが、まさか、お前もやれば出来るんだな。」
優しい目。
それじゃ……
期待を込めて牧野を見ると、また笑われた。
「10問中8問正解だ。」
「え……」
「何だ? 今日初めてやった教科だぞ? それで8割とれたことは今までになかったじゃないか。」
まあ、確かにそうだ。でも、俺はそれじゃ物足りなくなっていた。
なんでだ?
「2問は、昼飯食べてから解説するから。」
「え?」
「さっきから何だ?」
「いや、牧野のことだから”解説のあとに昼飯だ”とか言うんじゃないかと思ってた。」
「? 俺はそこまで鬼じゃない。それに……」
「それに?」
「飯が冷める。お前には、美味しい状態で食べて欲しい……」
そう言って、牧野は俺に背を向けた。どうやら、リビングへと案内してくれるようだ。
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