アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
アタシのなにがわかるわけ?
-
「…ああ、やっと来たか。待ってたよ。」
無遠慮に開け放った扉の向こう。
これまたなんかよくわからん程派手な机の奥腰掛けたままこっちに向けて優雅に微笑んだダンディなおじさまが恐らく理事長なんだろうけど、こちらの急襲にも顔色1つ変えずむしろちくりと嫌味で返すあたり食えない奴だわ。
アタシの嫌いなタイプね。
何よりも、源ちゃんのことを狙ってる野郎だってことが一番気に食わない要因でもあるんだけれど。
「源から話は聞いてるよ。よく来たね、歓迎するよ。玉緒。」
「(源ちゃんを呼び捨てなのも気に食わないけど何よりアタシを呼び捨てにすんじゃないわよ!馴れ馴れしいわね!)…藍川です。」
「…ああ、いきなり呼び捨ては嫌だったかな?いつも話を聞いていたからつい他人という気がしなくてね。」
「(自慢?源ちゃんと自分はそんだけ親しいんだアピール?うっざいわぁ)源は、なんて?(でも気になるから聞いちゃうけどぉ!だっていっつもアタシの話してるってことでしょお~?源ちゃんてばどんだけアタシ大好きなのよーもぉ!)」
「ん?自慢の息子だって言ってたよ。大事にされているんだね。」
「そう…ですか(自慢なのはいいけど、息子ぉ?!アイツ、帰ったらお仕置きね…)」
「…でも、聞いていた話と少し印象が違うみたいだね?」
「…(源ちゃんのばか。もしかしなくてもアタシがオネエ系ってことこいつに話してんのかしら。)山田、案内済んだなら仕事戻れば?」
「え」
今の今まで空気と化して部屋の壁とお友達になっていた山田に声をかけると案の定自分に話しかけられるとは思ってもいなかったのか驚きの声が上がる。
でも、あんた居ると色々邪魔なのよね。
「ああ、そうだった。山田さん、ご苦労様。もう通常業務に戻っていいですよ。」
「あ。え?はい…?」
状況がよくわからないまま理事長室を出て行く山田。
扉の閉まる音と共に、きっちりとしめていたネクタイを緩める。
「…はぁ…1つ、確認したいんだけど。」
「何かな?」
「理事長って、ショタコン?」
「………いや、違うよ?」
「あ、そ。」
源ちゃん狙いだからてっきりそうなのかと思ってたわ。でもまあ童顔好きじゃないわけだ。
じゃ、意外と交渉の余地ありね。
「じゃーさ、俺にしとけば?」
にやりと色を含んだ笑みを浮かべ、一瞬で理事長に近づくと、深く腰掛けている椅子の肘置きに片膝をかけ、縫い止めるように両手を顔の横につく。
これで落ちない奴は居ないだろってくらい極上の微笑みを出血大サービスだ。
「…それは、源には手を出すな、ということかな?」
「どーとってくれてもいいけど?」
質問に質問で返し、また笑う。
こんなに密着してるのに余裕そうな顔で同じく微笑み返す理事長に、やっぱりコイツ食えないわあ、と内心毒づく。
「じゃあ、本当の君を見せて欲しいな。」
「…。」
あくまで源ちゃんに手を出さないとは言わないで、アタシの頬をゆるりと撫でる。
ほんと、恋敵でさえなけりゃこんな極上の男、大歓迎なんだけど。
「それとも、本当の君はこっちかな…?」
にこり、完璧すぎる程の笑み。
そしてするりと撫でられた首筋。
全てを見透かそうとするように覗き込まれる瞳。
これはまずい。そう直感で感じた。
この男は危ない。
アタシの本能が告げている。
「本当、ねぇ…?」
喉で笑いながら男の言葉に目を細めた。
本当の自分は『アタシ』に決まってる。
でも、本当にそうだろうか。
長いことアタシは『アタシ』だったしそれが自然だったけれど、じゃあ『アタシ』はいつ生まれたんだっけ。
その前のアタシは一体『何』だったんだろうか。
「どっちでもいーじゃん」
少なくとも、アンタには関係無いよ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
5 / 12