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化かし合い、ひとまず決着
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男の耳元で付け足した言葉に、自分で自分に言い聞かせているようだと思った。
自分の口から出た言葉に誰よりも自分が動揺している気がしてしまって。
そのまま男の綺麗に撫で付けるように整えられた髪をわざと乱すように掴み、引き寄せる。
「源が好き?」
鼻先がふれあいそうな距離で、問う。
「…好きだよ」
予想通りの返答に少しの苛立ちとおかしさがこみ上げる。
「じゃあ、あげない。俺は源を『愛してる』から。」
にこりと笑って言えば、目の前の男も目を細める。
「その聞き方は狡いな…」
くすりと笑い、それでも男は少しの動揺も見せやしない。
「そー?…源に手を出すなよ。あいつは、あんたみたいな奴が触れていい男じゃない。」
「何故そう言い切れる?私だって、君と同じように…いや、もしかすると君以上に源を愛しているとは思わないかい?」
「…五月蝿いなぁ…黙れよ。」
あんたは俺に溺れてりゃいーんだよ
言ってることに筋なんか通っていないし支離滅裂で。
ただの八つ当たりみたいな、ガキの我が侭にしか聞こえないってわかっちゃいるけど。
でも。
もうその口から溢れる言葉なんて聞きたくなくて。
ぐい、と男の高そうなネクタイを掴み引き寄せ噛み付くように口づけた。
「…」
アタシの突然の行動にも驚いた様子も無くされるがままに唇を貪らせる様になぜだか無性に空しくなった。
自分は一体何をしているのかと混乱する。
でも口は貪欲に食らいついたまま、こうすることで少しでもこの男に対する優越感を感じることができるんじゃないかと僅かに開いた口腔へ舌を差し込んだ。
なんでアタシ、こんなことしてんだろ。
源ちゃんが悲しむかしら。
ぐるぐると考えることはそんなことで。
でもアタシが誰とキスしようと、例え自分の旧友と寝ようとも、傷つくような人じゃないって冷静な頭の奥ではわかっているの。
だって源ちゃんはアタシのことなんて子供としてしか見ていないんだから。
「…は、抵抗、しないわけ。」
されるがままの男にも、堂々巡りの思考にも飽きて。
口を離し銀糸の伝う距離のまま聞いてみるけど、正直答えなんてどうでもよかったの。
「なぜ?抵抗する理由が無い」
…なによそれ。
答えなんてどうでもよかったけど、そんな答えが返ってくるとは思いもしなかったわ。
思わず一瞬素で驚いて顔を見つめ返してしまったアタシに男は更に口を開く。
「俺はね、源のことを高校時代からずっと見て来た。馬鹿みたいに真っすぐで純粋でお人好しでいつだって自分のことは二の次で人の為に突っ走って…本当に、あいつ程馬鹿みたいにいい人間を俺は知らない。」
アタシの知らない源ちゃんを、この男は一杯知っている。
そう思うだけで胸がむかむかした。
「高校の頃からずっと想ってた。それは今も変わらない。今回の話を受けたのだって源の言葉だったから。…でもね、少し君自身にも興味があったのは本当だよ。」
「…?」
「いつもいつも話すんだ。嬉しそうに、楽しそうに。晴子の所に居る頃から、可愛い甥っ子ができたみたいだって、話してた。
源の所に君が引き取られてからなんてしょっちゅう言ってたよ。玉緒はとってもいい子だ、優しい子なんだとね。
一度写真を見せて貰ったけど、源を抱きしめて自分のものだって威嚇してるみたいで、すぐに恋敵だってことには気づいてたよ。
…恋敵、か。お互い不毛な恋だ。
好きだからこそ、触れられない。
学生の頃から何度だって手を出すチャンスはあった。でも…あんなに綺麗なもの、とてもじゃないけど汚せない。君も、そうなんじゃないか。」
「…俺は(アタシは)臆病者じゃない。高校を卒業したら源を自分の物にするつもり。…俺はあんたとは違う。」
そうだ。アタシが今ここに居るのは、そのため。
源ちゃんにアタシの本気をわかって欲しいから、こんなくだらない賭けにも乗った。
アタシの気持ちを、冗談なんかで流させないために。
ねえ、源ちゃん
アタシ、ほんとにアンタのこと
「…これは、帰ってから言わなきゃだめよね。」
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