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女神の写し鏡(訳:あなたの真似をしたい)
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「この甘美なる口当たりは…もしかして…カカオ!」
「もしかしなくてもカカオだよ!」
「雷蔵くんはいつもこんなおしゃれな飲み物を飲んでるのか…」
「いつもじゃねーよ?桜はカフェとか入らねぇの?」
「普通の高校一年生がカフェに入って何をするんですか…」
「ぎゃははは!!!普通の高校一年生!?お前が!?ウケる!」
「えっ、今のどこに笑うところが!?」
忘れていたわけじゃないけど、そうだよな。桜は俺より二つも下で、ついこないだまで中学生だったんだよなー。テーブルに肘をついて、ストローを咥える。ズズッと行儀の悪い音を立てながらカフェモカを喉の奥に押し込む。その間桜の顔をじっとみつめていると、桜が俺の視線に気づいてばち、と目があった。けど、すぐに逸らされた。桜もストローを咥えてカフェモカを飲む。すこししてちら、と視線だけ俺に向けて、俺がまだ桜をみつめていることに気づいたら慌てて目線を下に下げた。
「ぶはっ、ほんと面白いな。なんで目ぇ逸らすの?」
「…こ、困惑のメデューサ…」
「時々ギャグつっこんでくんのやめてくれ、笑う」
「ギャグじゃない!貴方の視線は、僕を搦めて離さない…」
「何言ってんだよほんとに!俺ラブアピールされるのすきだけど、こっちが恥ずかしくなるっての」
「恥ずかし…!?す、すみません、気をつけます」
黙っていれば端整な顔立ちをした線の細いイケメンなのに、色々勿体無いよなこいつって。
拗らせまくった厨二病のせいか、友達がいないせいか、対人関係に滅法弱い。そういうとこも含めて俺は桜という人間に魅力を感じるのに、こいつはどうにも自分に自信がないらしい。
「桜、俺がお前の言葉で恥ずかしくなるのは俺の勝手。お前がお前の言葉で俺を恥ずかしがらせるのもお前の勝手。自然体でいろよ、恋人だろ。」
「……僕、今凄く緊張してるんです。なんだろう、デートとか初めてだからかも」
にへ、と顔をゆるませて、桜が笑った。そんな顔で笑ったのは初めて見た。いつも少し引きつった笑みを浮かべるくせに。なんだ、…可愛いじゃん。
「今日さ、何処いくか色々考えたんだけど。お前が行きたいとこが無ければ俺についてきて欲しいんだよね」
「はあ、どこにでもお供しますよ。マイロード」
「キャラぶれしてっからな?俺お前の主人じゃねーし!んじゃそれ飲んだら行くか」
「飲みきるまでもう少し時間かかるんですけど、その行きたいところってどこですか?」
「んー?行ってからのお楽しみ!だーいじょうぶ、何時に行ってもチケットさえあれば入れるからさ」
良かった。行きたいとこあるとか言われたら困ってたところだった。と、安堵した。実はもうすでにチケット買っちゃってんだよね。水族館の。
女の子とデートするときは、どこに行きたいか事前にきいて、特に要望がなかったら俺が決めるっていうのが普通だと思ってた。でも女って大概「どこでもいいよ」っていうんだよな。そしたら連れて行く場所のレパートリーが減って、最終自宅デートが増えるっていう。まあ俺の家に人は呼べないから、俺が彼女の部屋に転がり込んでた感じなんだけどさ。
だけど、俺は知ってる。
そういうふうになるとマンネリ化して最終的にわけわかんねぇ喧嘩して別れる。俺と桜は期間限定の恋人だけど、こいつとくだらねぇ喧嘩別れとかしたくないから負担は半分こにしたい。
だから今度デートするときは、桜にエスコートして貰おう。今日は俺がエスコートする。のは、当然。年上だから?はじめてのデートだから?桜の誕生日だから?…というより、俺がしてやりたいから。
桜といると、未来永劫に楽しいんじゃねえかと妄想してニヤニヤする。こいつとは別れても友達でいたいし、どんな形でもいいから繋がっていたいと思う。不思議とな。
…まあ、そういうわけにもいかないだろうけど。
今はまだいい、考えなくていいことは考えない。そうやってチラついた不安を後回しにして、目の前に壁として現れた時に考える。その方が人生楽しいじゃん、考えてばっかりいても、なんでも案外考えと別方向でどうにかなってしまうんだから。
桜がカフェモカを飲みきるまで色々と話すことにした。桜は案外、話しはじめると止まらない。特に趣味の話とか、ぺらぺらとよく喋る。俺は人の趣味のはなしとか聞くの好きだからその時は大人しく聞き専に回る。ゲームの話、漫画の話、なんかよくわかんないフィギュアに2万ぐらい注ぎ込んだという話、…2万て!!バカじゃん!?って笑うと、「いいんですよ、自分で稼いだお金ですから」と言われた。
そっか、自分で稼いだ金ならどう使おうと自由だよなー。と、納得してから気づく。
「お前バイトしてんの!?この間まで学生ニートだったじゃん!?」
え、なにそれ知らない、雷蔵ちゃんの知らない情報だよ、それ!!!
「してますよ。高校生ですから」
「へぇ、意外としっかりしてんのね」
「雷蔵くんがアルバイトしてるって言うから、僕もしてみようと思って。」
短期のですけどね。と付け加えた桜が、最後の一口を飲み干した。
なんだそれ、ほんとに俺の真似っ子じゃん!だけどそっか、こいつ俺に影響されてるんだ。…それはちょっと、気分いいかも。
桜がカラになった容器を、俺の分と自分の分を手にとって席を立った。「お、サンキュー」と素直に礼をいうと、「雷蔵くんが持ってきてくれたんですから、僕が片付けるのは当たり前です。ごちそうさま」と言われた。ちょっと意外だった。というか多分、桜が意外な面ばかり見せてくるだけなんだけど。
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