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【番外編】人になった鬼
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「待ちぃや!花宮――――」
あの人の声が消えた。気が付きゃ、俺は扉の前にいた。
「愛、してたのにな……」
分かっちゃいたんだ。あの人は鬼としての役目を取るってな。
俺は、馬鹿らしくなったんだ。どっちが悪者とか、どっちが正しいとか……ねえんだから。
人間からすりゃ俺達はどっちだろうが悪役だ、相容れない仲なんだよ。
なのに、争うとかバッカみてえ。
だから俺は、争うのを止めろって言ったんだ。
普段開かねえ扉を押した。ギイ、と音がして開いた。
……何で、開いた……?
「花宮。今、お前の居場所はこの世界から消えた。だが、逃げたいと思うなら……生きたいと思うなら扉の向こうに行け。
今なら、俺が支えているからお前でも通れる」
誰かの声がした。生きたいと思うなら?
生きてやる。あの人に、分からず屋の頭領に、裏切り者が生きてんだって見せつけながら生きてやる。
「生きてやる……、何が何でも……!」
そうして俺は、人間界へ逃げて人間として生まれ変わった。
人間として生きるのは楽しい。俺を知ってる奴は誰もいねえ。
と、思ってた。
「花宮、やんな?」
忘れもしない。あの人が、中学にいた。
「あんた、……」
俺は逃げた。見つかりゃ殺される。何でいやがる?何で。
「待ちぃや、花宮。ワシはもう、鬼やない」
あの人は俺を容易く捕まえて言った。
「お前が居らんようになってから、まあなんやかんやあってな。ワシも転生したんや」
信じられなくてあの人を見たら、困った顔で手を引っ張って頭を触らせた。
角は、なかった。
「もう、鬼やない」
「……妖怪なのは変わってねーじゃねえか」
「そら、生まれつきや」
「心読むな、妖怪サトリ」
「傷つくわぁ」
それだけだが……、何だか嬉しかった。
「花宮、愛してる」
それだけ聞けりゃ、帳消しにしてやるよ。バァカ
「はっ、妖怪に好かれても嬉しくねえよ」
「ツンデレか?」
「知らねえよ!」
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