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嫌いだと言えれば【忌子視点】
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俺は今ほど、両親に感謝する事はねえだろうなと思った。
俺は忌子だから、狩りに出た事はない。でも、そんな俺でも長のおかげで強くなれた。
「オラオラオラ!次来い次!片っ端から消してやるよ!」
式神はいくら強くても、対悪魔用と対鬼用がある。悪魔と鬼の血は、んな所まで喧嘩しなくてもいーだろうに混ざるのを嫌がる。
無理に混ぜれば毒になって人間が支配出来ねえ式神もどきになる。化物だって長は言ってた。
だから、忌子の俺には効果が半減する。どんなに強かろうが一撃食らったくらいじゃ消えない。
そして、忌子は生まれること自体少ない。
「お前、忌子か!?」
祓い屋の一人が俺に気付いた。遅っ。
「だったら何だよ」
「俺も忌子だ!俺は若様に助けられた。鬼には蔑まれ、悪魔には憎まれた。苦しくねえか?忌子と呼ばれんのが辛くねえか?」
俺はギクリとした。その通りだ。プライドの高い鬼共に蔑まれ、悪魔には鬼の血を引くからと憎まれた。
「俺は何とか逃げ切れた。お前も逃げよう!悪魔と鬼を倒すんだ!」
ただ、それは。誰も俺を愛してくれなかったらの話だ。長は俺を息子か弟みてえに愛した。火神は俺に魔力の使い方を教えた。使えなきゃ俺は役立たずとして尚更蔑まれるから。
忌子には、忌子を愛してくれるヤツがいる。それがコイツには人間で、俺には誠凛の皆だっただけだ。
補佐の大坪は責任感じてたまにこっそり俺の様子見に来たし、木村だって誠凛がいなくなった後は世話してくれた。
「はあ?俺はこの世界が好きなんだよ」
高尾も、緑間も。俺の意見なんか普段なら聞かねえだろうに、俺を尊重して前線に立たせてくれた。
「誰もに嫌われるこの世界が!?」
「ふむ」
緑間が俺の前に立った。高尾も俺の背中を守る。
「貴様は随分前に人間界で行方不明になった忌子だな。祓い屋になっていたとは」
「確か桐皇の忌子だっけ。荒れたよねえ、若松サンと青峰」
桐皇の忌子……。俺は納得した。確かに、あそこなら秀徳より酷いだろう。そもそも海常と並ぶくらい鬼と悪魔が仲悪い。
冷戦な陽泉、洛山、秀徳や友好的な誠凛と比べりゃ一目瞭然だ。
「ま、確かに忌み嫌い傷付けた俺達も悪いけどさあ」
「逃げ出して仲間を裏切った裏切り者に、同情も何も無いのだよ、馬鹿め。
宮地と貴様を一緒にするな」
ああ、これだから嫌いだと言えねえんだ。
沢山傷つけられた。でも、やっと。やっと、悪魔も鬼も俺を、忌子を認め始めた。
こうやって、戦に不慣れな俺を守る奴をどうして嫌いになれるだろう。
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