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俺×佐藤孝介
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所変わってカラオケの個室。
俺と佐藤孝介は部屋の片側にしかないソファに並んで座っていた。
俺の体の話なんて屋外でなんて出来るわけないし、自宅も的井くんがいるからNGだ。
カフェなど飲食店は隣席の人に聞かれる可能性もあるためバツ。
残すは多少なりとも防音設備のある、ラブホかカラオケ、ということでカラオケに。
テーブルを挟んだ向かいの壁にはモニターがかけられており、今週のヒットチャートとオトク情報の映像が流れている。
それをドリンクバーのカプチーノを飲みながらぼんやり眺めている俺と、野菜ジュースを飲んでいる佐藤孝介。
沈黙を裂いたのは佐藤孝介だった。
「それで、話ってなんだ?というか聞きたいことが沢山あるんだけど…」
「…何聞きたいことって。」
「いつの間に引っ越したんだ?おじさんとおばさんからは今入院してるって聞いたけど、どういうことなんだ?治療中ならこんな所にいたらダメじゃないのか。あっ、口元泡残ってる。」
「あーーーもう!1つずつ聞けって!口元ぐらい自分で拭けるし!」
こちらに手を伸ばしたあたりで制止する。
備え付けのナプキンを自分で取り乱暴に拭うと、肌を痛めるだの抗議の声が聞こえたが知らん。やかましいわ。
「引越ししたのは1ヶ月半ぐらい前!経過観察中だけど入院はしてない!だから外出も問題なし!」
「経過観察中、ってなんのだ?」
「薬だよ薬!治験ってやつ!」
厳密には治験じゃないけど。
「薬…?それがなんで引っ越すことになるんだ…?」
「その治験の報酬だよ、広くてキレーな家で悠々自適に過ごしてます〜。」
「そうか…ちゃんと生活できてるなら良かった。」
元々垂れ気味の目が更に緩く弧を描く。
ほっとしたような表情に少し罪悪感と、怪訝な気持ちになる。
「そういうお前は、なんで俺を探してたんだよ。」
「左々、言葉使い…」
「質問に答えろ!」
第一言葉使いは元々悪かったわい!
少しムッとした様な顔で答えた。
「電話かけても繋がらないし、メッセージも返事がないからお前の家に行ったんだ。前にSNSで仕事がない、って愚痴ってたし、もしかしたらご飯食べれてなくて困ってるんじゃないかと思って。そしたら居ないし、大家さんに聞いたら引越ししたって言うし。」
そりゃまあ、間式に行く前は貯蓄も所持金もゼロのリアルゼロ円生活してたし、1週間を水道水で生き繋いでた状態だからご飯なんて食べれてなかったが、とはいえこいつに世話される言われはない。
てゆーか、こいつ俺のアカウント知ってたのかよ…。
「おじさんとおばさんに聞いたら入院中だって言われて、でも入院してるなら引っ越す必要ないし、おじさん達も引越しのことは知らなかったし。」
あれー間式さん?それは言っとこうよ?なんで言わなかった?お仕事忙しいもんねそうだよねそこまで気が回らないよねー!!!
「おじさんもおばさんもあんまり気にしてなかったけど、もしかしたらなにか良くない事に巻き込まれたんじゃないかと思ったんだ。だから探してた。…でもひとまず無事みたいで、よかった。」
「…お前が心配することじゃない。」
「心配するだろ!左々は俺がしないと連絡してこないし、向こう見ずだし…女の子なんだから、警戒しなくちゃ…」
「………。」
こいつ…。
素で言ってるのか?いや素だな、ものすごく真面目に言ってる。
いや凄いな、どこをどう見たら女に見えるんだ?今の俺が。
「あのさあ、佐藤孝介クン。」
「?なんだ?」
「俺今、男なの。」
「…?」
「だぁから!男なの!まんこがなくてちんこがあるの!」
「こら、そんな下品なこと大声で言うな!」
「そこじゃねー!!!男の体なの!女じゃないの!お分かり?分からないか!?」
「そんかことあるわけないだろう」
「うんそうだよね、それが普通の反応!でも事実なの!なんで男の俺を『館上左々』だとら認識出来たんだよ!!!」
「…?左々は左々だろ?」
ダメだ、俺の脳の処理が追いつかない。もう諦めよう。こいつのことは昔から理解できなかった。それが理解出来るわけない。
あっそ、と捨て台詞のように呟いて、ぬるくなったカプチーノを飲み干した。
「男になった、って本当に言ってるのか?」
「本当本当。リアルガチでマジな話。」
「…そんな事あるのか?」
あるんですよねーこれが。
もうこの佐藤孝介に対して(精神的に)敗北した俺は、俺が男になるまでの経緯を話した。
ついでに本来は口外しては行けないこと、だから他の人には漏らさないようにして欲しいことも伝えた。
信じきれないという表情ではあるものの、後半のお願いについては承諾して貰えた。よかった。
「でも、信じられないな…」
「俺はお前が俺を見て女だと疑わなかったことの方が信じられないよ。」
「だって左々は女の子だから…」
「だからもう女の子じゃないっての。ほら。」
「なっ…!」
佐藤孝介の左手を掴んで俺の股間を触らせる。
するとぽかんとしていた表情が諸々を理解するとみるみる赤くなる。
「わ、わ、わかったから!手を…!」
「別にちんこなんてお前にも付いてんだろ、恥ずかしがるなよ〜?」
あの佐藤康介にしてやれたような達成感を感じて、言いながら佐藤孝介の股間にも手をはわせる。
傍から見たら男友達の悪ふざけでギリギリ通せる範囲だろう。ギリギリ。たぶん。
俺の手が自分の股間に触れた途端、佐藤孝介は更に顔を赤くさせた。
いつもは割と落ち着いているというか、ポーカーフェイスというようなやつなのに、俺の手によって表情が変わるのが面白い。
しかしお楽しみ時間もわずか、抑えていた左手は振りほどかれ右手もつかみ挙げられている。ちっ。
「い、いい加減にしろ…!とにかく、早くその製薬会社で元に戻れるようにしてもらった方がいい!」
「なんでだよ、別にいいだろ」
「だって危ないだろ、一生のサポートって…しかもそんな薬開発されてるなんてどこの論文にもニュースにもないぞ、左々、騙されてるんだよ。」
「………。」
「お前のことは俺が面倒見てやるから、やりたいことも出来るように支えてやるから、だから…」
「…やりたいこと、やらせてくれんの?」
「もちろん、だから」
掴まれている右手を強く握り返す。
男に二言はないよな、佐藤孝介。
「場所、変えよう。」
そのまま佐藤孝介を引っ張り出して、カラオケを、後にした。
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