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アップルの苦難
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なんとか熱もおさまり無事教室へと迎える準備が整った。
「昼からって何があったっけー」
「数学と英語だな」
「うわ両方嫌いなんだけ」
「よー!遅かったなアップル坊や!」
午後の授業のかったるさを語り合いながら教室へ踏み入ると同時にとんでくる甲高い声。
杏樹は瞬間的に体中の筋肉を硬直させた。
杏樹たちの姿を見かけると仲間たちの輪から外れてまで彼らを構いにきた男子生徒。
にやにやと意地の悪い笑顔だった。
「んー?顔赤いぜー?まった恥ずかしいことあったんじゃねーの!かっわいー!」
馬鹿にしたように大笑いすると呼応して教室中が笑いの渦にのまれた。
嘲笑の合唱にじわりと杏樹の目じりに涙が浮かぶ。
同時におさまってくれたはずの熱が再発しそうになる。我慢しても生理現象はごまかせない。
ふるふる震えて泣き出しそうな杏樹の前に立ち、伊予は男子生徒を見下ろす。
背丈のある伊予に見下ろされてすくみそうになるが、仲間の前で情けない姿はさらせない。男子生徒は少し震えた声で伊予に向かって啖呵をきった。
「なっなんだよ鉄仮面野郎!無駄にでけぇんだよてめぇ!」
「杏樹を馬鹿にするなゆたか。おまえこそそのばかみたいな大声どうにかできないのか。さるみたいだぞ」
「だっ誰が猿だこの無表情野郎が!!!!!」
取っ組み合いになる空気になってきた。
この二人はよく衝突する。
杏樹を馬鹿にするゆたかと、杏樹を守る伊予。
二人は杏樹という関係性を持っているが、決して相容れぬ二人だ。
また殴り合いになるのか、と期待と不安に満ちたまなざしが交差する教室だったが、次の授業担当の教師がやってきた。
まなざしが一気に不満一食に染まったのを杏樹は見逃さなかった。
「命拾いしたな」
「おまえがな」
捨て台詞をはきあい、着席する二人に続き杏樹もいそいそと移動した。うつむいた顔は、もちろん真っ赤だった。
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