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アップルの赤面症
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杏樹は赤面症だった。
それもひどい類の。
赤面症とは人と話すときや緊張した時に顔が赤くなるものである。
これは皆一度は体験したことがあることだが、赤面症は些細なことでその症状がおこる。
たとえば人と話をするとき、あまりなれていない初対面の人間と会話を交わすとき、そうでない人も多少は赤面するだろう。
だがすぐ治るはずだ。重度の赤面症は治らない。ずっと赤いままだ。
これは一種のコミュニケーション障害に部類するらしい。
赤面恐怖症というほうが杏樹にはあっている。
顔が赤くなってそれを確認されるのが怖いのだ。
周りは可愛いじゃないか。何に怯えてるんだい?と首をかしげるかもしれない。
少なくとも杏樹はそれがたまらなく不快だった。
顔が赤い。照れてる。可愛い。そんな単語を自分に向けて放たれるのに強い恐怖と不快感と不安を感じる。
そして赤面症を馬鹿にされたくないとばかりにあまり人とは関わらないようになってくる。自分を閉ざしてしまうのだ。
そんなことぐらいで。鼻で笑い飛ばされるような小さなことかもしれない。
だが、この苦しみはきっとわからないだろう。
顔が赤くなること自体に恐怖を感じるという理不尽さが。
そんなものいいじゃないか。個性だ。と慰めてくる奴らも。
きっとこの苦しみを味わえば分かるはずだ。
何も知らないくせして言わないでほしい。
ちなみに赤面症には治療などというものはなくまた原因も不明なので、杏樹には地獄だった。
そんな自分を振り返っている時でさえなぜか赤くなる自分の頬を引きちぎってやりたかった。
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