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アップルと二人乗り3
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「あっあんじゅ…坂なんだけど………はあはあ………」
「いっけー伊予!おまえの力を見せてやれ!自転車におまえのすべてをぶつけてやれ!」
いい答えは期待してなかった。
伊予は覚悟を決め深く深くペダルを踏み込む。
杏樹が立っているので立ちこぎもできず、歯を強くくいしばってひたすら自転車をこいだ。
最初はまだ楽だったが先に先に進むたびに心臓が痛いし、ペダルも重量を増したようだ。とにかく早くこの難所を乗り越えなければ。
格段に遅くなったスピードの不満を持った杏樹は唇を尖らせて、伊予の頭を軽くたたいた。
「いーよ!もっと早く漕げ!」
人の苦労も知らないでよく言う。そんな事を思いながらも伊予は懸命に坂を越えた。
登り終えてふと気を抜いた瞬間、自転車が揺れた。
下り坂の存在をすっかり忘れてしまっていたのだ。
「うわああああああああああ!」
「ひゃっほーい!速いぜ速いぜー!風になろう!」
加速していく自転車におびえる伊予と、風を切る快感に叫ぶ杏樹の目の前を、小さな影が通った。
それが猫だと伊予が気づくまで4秒後。
伊予が慌ててハンドルを切るまでさらに5秒。
調子に乗って立っていた杏樹の体が振り払われるまで7秒。
杏樹の小さな体がポリバケツに突っ込んだ瞬間、伊予の顔からは血が失せた。
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