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アップルを抱きしめる2
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杏樹の背中に腕をまわしてそっと引き寄せる。
軽い力なのにあっさり倒れてきた杏樹の身体を受け止める。
自分から杏樹に近寄るとはっきり伝わってくる彼の体温。
あったかい。
まるで柔らかい布を抱きしめているかのような浮遊感に陥る。日光浴を体感する時は違った別種の温かさに思わず息をこぼした。
やさしいぬくもりは伊予の脳内を麻痺させ夢の世界へと誘っていた。
彼の意識にはもう杏樹しかいない。
他のものなど目に入らないし映らない。ただ、杏樹と自分だけの世界に入り込んでしまったようだ。
鼓動がうるさい。この心音は誰のものなんだろう。
自分のものなのかそれとも杏樹の心臓の音なのか。それすらも混ざり合い一つの音色とかしていた。
もっと近くでこの癒しを味わいたい。とろけた脳内で願う。
まだまだ遠い。境界線なんてなくなるようなほど、近くで抱きしめあいたい。
遠いんだ。
「くっ苦しいぞ伊予!馬鹿力か!」
杏樹の苦しそうな声で目が覚める。温かい世界は消え失せ無機質な室内へと逆戻りした伊予はしばし硬直状態になり現実をゆっくりと再認識していく。
見下ろすと杏樹がやや息苦しそうに目を細めていた。
「ったく何やってんだよ…恥ずかしい関係なく真っ赤になっちまった…ん?大丈夫か?顔真っ赤だぞ」
「大丈夫っ…」
彼の服に食い込む自身の腕にやっと気付き、慌てて腕を放した。自分で手放したはずなのにまた抱き寄せようとした自分がいることに、茫然と喪失した。
これは大変まずいかもしれない。
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