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アップルの恐怖
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荒々しく奪われた唇は痛かった。
初めてのキスはこんなもんじゃなかったと何かのドラマで見たことがあるが、まさにその心境だった。
軽い出来心から生まれたこの現実が、あまりにも乱暴な結末で。
これがキスではないという認識はできている。ただ、痛い。唇も心も。
伊予はただただ自分のことをどう思っているのか気になった。
この口付けが答えだとは思いたくもない杏樹のことなど見えていない。伊予は杏樹のことがはたして認識できているのか。
まだまだ幼い彼には分らないが、一足早く大人へのステップにたどりついた伊予の突然の行動による原理はわからない。
だがこれが、明確な分岐点だということは理解に難しくなかった。
「伊予!やめっ」
顔を離して呼吸にあえぐが再び塞がれる。
声なんて聞こえていないような横暴に杏樹の腹の底から熱いものが込み上げてきた。目に見えない感情が目の前を真っ赤に染め上げる。
押し倒してくる伊予を本気で突き飛ばす。意表を突かれたうえにほぼ夢中だった伊予は簡単に吹っ飛んだ。テーブルの角に頭を打ち付け唸る伊予を、恐怖の一言で尽きるまなざしで見降ろした。
冷静なあきれではなく、真っ赤になった顔を見上げ口を開こうとするがそれより早く杏樹が目じりを釣り上げた。
「お前がそんな奴だとは思わなかったぜ!もう近づくな!」
声がかすれるほど強く怒鳴りつけ、杏樹は部屋から飛び出した。
「杏樹!」
慌てて後を追おうとするがダメージが深い。杏樹は自室だというのに伊予を残して家を出て行ってしまった。
やってしまった。取り返しのつかないことを。
取り残された伊予は杏樹の部屋で頭を抱えて動かなくなった。
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