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アップルに異変
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異変が行ったのはそれから1週間ほどたった頃だった。
伊予と杏樹に何かあったことは周りの生徒たちはなんとなく察していた。聞くことはできない。彼らの間にあるのは軽々しく踏み込んでいいものではないと雰囲気でうなずけたのだ。
だが好奇心旺盛な性格の生徒は必ずいるもので。
それがたまたま伊予と杏樹に敵視されているゆたかだっただけだ。
「お前ら最近どーしたんだあ?喧嘩でもしたんか?葬式みてえなオーラ!暗いぞー!」
ゆたかにしてみればこれは場の空気を盛り上げようとしているだけだが、当事者達からすればうっとおしいの一言に尽きる。安定した水面に岩を投げ込まれた気分だ。
「てか杏樹ー!いやアップル坊やちゃんがどうせまた変なことしたんだろー!?お前ら最近いちゃついてるもんなー!まさか好きだったりとかするん!?」
ゲラゲラを下品な笑い声が教室中に伝染する。ゆたかの思惑は通ったが杏樹の心にひびが入る。
今俺はつらいんだ。なのになんでこんな馬鹿にされなきゃならないんだろう。赤面なんてなかったらこんなことにならなかったんだろうな。
実は分かってたんだよ。何でもかんでも赤くなることに責任を押し付ける自分が一番悪いって。皆が言うとおり堂々としていればこんなのも長続きしなかったんだろうか。後悔してもいくら願おうと時間は戻らないだから今から始めようとしたんだ。解消する方向性へと向かったのだが行き止まりで詰まってしまった。コンプレックスを抱えて生きていく勇気を、見つければよかったのに。
徐々に熱を持ち始めた頬を恨みながら、杏樹は目じりに涙をためる。
「また顔赤くなってんぞー?やっぱりそっちのほうがアップル坊やらしくていいんじゃねーの?はずかしがんなよかっわいいなー!」
わざと大声で笑い飛ばされ、ついに杏樹の目から涙がこぼれおちる。机の上に落ちていく涙が跡を作ったがゆたかは気づいていない。
すると鈍い音が響いた。教室の笑い声が消える。
「杏樹を、杏樹を馬鹿にするな!」
怒りを露わにした伊予がゆたかを殴り飛ばした音だった。滅多に無表情を崩さない伊予は、激をあからさまに表面に張り付け声音にも怒気が滲んで漏れ出す。
いつもは怒らない奴が急に怒ると怖いものがる。ゆたかは完全に逃げ腰になって、机にもたれかかった。
「まっまてよ伊予!そんなに怒ることでもねえだろう!?」
「ふざけるなお前にとって大したことじゃなくても杏樹からすると嫌なことなんだ!中学生にもなってゆたかの頭は成長していないの!?」
「なっなんだとこの野郎!お高くとまってんじゃねえぞ!」
「今日こそ決着をつける…!」
殴り合いを始めた二人を杏樹は茫然とした目で見つめ、やがて生徒が引き連れてきた教師に連行される伊予の背中を涙で滲んだ目でずっと見つめていた。
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