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オレンジの苦悩
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教師にこってり絞られその後伊予は教室に姿を見せなかった。
反省文をゆたかと並んで指導室で並ばされていた。ゆたかにはまじめに反省文をつづろうという気持ちは皆無らしく、そっぽを向いてふてくされていた。
伊予も彼と会話することなどなくさっさと原稿用紙を埋め一足早く解放された。
昼からは1時間しかなかったので気づけば放課後になっていた。
解放された生徒たちは各々の目的を果たすためちりぢりになる。部活へ向かうもの、家へ向かうもの、街へ繰り出す生徒。人によって目指す場所は違う。
伊予はどの波にも飲まれず、一人でとぼとぼ歩いていた。
杏樹が泣いた。泣いていた。
これまでどれほど屈辱を味わわされようとも涙は流さなかった杏樹が。ゆたかに馬鹿にされた程度で泣いてしまった。
説明しがたいが、その時哀しみに打ちひしがれていた伊予の心に熱い怒りが込み上げてきた。
いつも以上の怒りが伊予を支配した。
気づけば躊躇いなくゆたかを殴り飛ばしていた。
後悔はしてない。自分は杏樹を守ったという勇者意識は抱かなかったが、ゆたかを拳で打ち付けたことに対しては全く何も思わなかった。
ゆたかは許せない。暴力に訴えた自分を責めたりはしない。
ただこれで杏樹との距離が広まってしまった。それがつらい。
人を殴り飛ばした自分に杏樹は更に恐怖や不信感を抱いてしまっただろう。
理性の利かない自分を濃くしてしまった。あの時の伊予を首を絞めてでもとめたかった。そんなことしても何にもならない。信用を失うだけだぞ、と。果たしてやめてくれるのだろうか。断言はできなかった。
このままずっと杏樹とは気まずいまま離れ離れになるのだろうか。思うだけで胃に穴があきそうなほど悶える。
どうしてこうなったんだ。考えればやはりあの分岐点に辿りついてしまう。
責めても責めても苦しんでも報われない。
伊予は一人ぼっちの道を歩こうとしていた。
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