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「ここが代沢くん家かー…」
「こ、これでも少しは片付けたんですよ?」
靴を脱いで持っていた鞄を下駄箱の上に置く。俺の今やっているゲームがクリア出来なくて、同じ職場で同じゲームをやっていて、しかもイケメンでゲームを既にクリア済というなんとも神がかった人がいたので無理を言って家まで来てもらった
流石にハードを運ぶのはキツイし、そもそも持っていった所でやる所がない。最悪壊れるし…
あっちの部屋です、と奥の部屋を指さし俺はキッチンで飲み物を用意していく
あー…前にカルピス飲んでたっけ、確か。
ガチャンと冷蔵庫を開けるとお茶や飲みかけのジュースしかなかった
とりあえず甘いやつ、と思って俺は甘い炭酸飲料のペットボトルを手に取り来客用のコップに注ぐ
しゅわしゅわ音がしてるが、買った時よりは炭酸が抜けている。
戸棚から適当にお菓子の袋を取り出しお盆の上に飲み物と一緒に乗せる
「おまたせしましたー、山本さんって炭酸好きですかー?」
「あ、うん!炭酸好きだよ」
「ちょっと炭酸抜けちゃってますけど、あ、後お菓子もどーぞ」
山本さんはゲームのセッティングを既に済ませていてくれたみたいですぐにゲームを始められた
画面いっぱいにタイトルが出てその近くにはパッケージにも出ているキャラクターがはね回っていた。
おっさんのくせにジャンプ力は高いわ花を取れば火を吹くわジャンプだけで敵キャラを倒せるわ…すごいおっさんだ
「何面が出来ないの?」
「あ、えっと最終面の亀が…」
「あー!あれね!俺も初見だと無理だったなー…」
「難しいですよね!」
「行動パターンを読んで上手く踏みつけたら勝てるよ」
「その、上手く踏みつけたらが出来ないんですー」
そう話している内に画面にはゲームオーバーの文字。今回はマグマに落ちて死んだのだ
ボスにたどり着くまでには様々な初見殺しの罠があって、それを上手く回避しつつヒットポイントを保ち華麗にボスを倒す…。
もともとゲームが下手な俺には一人でクリアなんて無理なんだ
山本さんにコントローラーを渡してテレビのガメンヲ見る
俺はリアルでもゲームでもチキンだからゆっくり歩いて慎重に進めるが、山本さんは大胆だ
走って走って止まる事無く走り続けダメージもそんなにくらわずにボスまで辿りついていた
ムービーをスキップしTAS動画でも見てるみたいに呆気なくボスを倒す
「山本さんすげー!」
「何度もやってるからねー」
エンディングムービーが流れているが、俺は早くスタッフロールが流れないかと待っていた
このシリーズにはよくあるスタッフロールになるとブロックが崩せるミニゲームがある。それが楽しみなんだ。コントローラーを新しく引っ張り出し2Pキャラを出そうとする
が、出てこない。選択画面すら出てこない。
「代沢くん?」
「2Pキャラが…出ない…です…」
「今作から無くなったらしいよ?」
「えー!?俺一番楽しみにしてたのに!!」
「はははは、はいコントローラー」
「山本さんはやんないんですか?」
「家で出来るからねー」
そしてこの顔であると言わんばかりのドヤ顔だこの人
山本さんは俺にコントローラーを渡してくれて、俺は画面の中のキャラクターを自由に操る
調子に乗り始めバク転やら火の花やらで遊んでいたその時だった
隅っこに空いている穴に落ちた。クリアしているのでゲームオーバー画面は出ないが、キャラクターは復活せずにスタッフロールだけが流れている。俺の叫びと山本さんの笑い声が部屋中に響く
「落ちたあああああああああ!?山本さん!!落ちたよ!!落ちましたよ!!ゲームオーバーじゃないけどある意味ゲームオーバーになっちゃいましたよ!?」
山本さんはお腹を抱えてヒーヒーと笑っている。仲間にしますか、いいえ。
俺はガックリと項垂れ、手からコントローラーがゴトンと無駄に重たそうな音を立てて落ちる
はぁ、と深くため息を吐くと山本さんはわしゃわしゃと頭を撫でてくれた
少し顔を上げるが、山本さんは笑いを堪えているみたいだった
再び項垂れていると、山本さんの声が少しだけ変わった
「ゲームも良いけど別の遊びもしない?」
「別の遊び…?」
グルリと視界がテレビから天井に向けられ、背中が痛む。理解できない、何が起こった?
きっと俺の頭はクエッションマークが大量に飛んでいるんだろう。山本さんは微笑みを崩さずそれはそれは女の子の髪でも触るみたいに俺の髪を撫でる
なんだこれ、マンガのワンシーンじゃねえんだぞ?
ていうか待って、待て。俺もしかして…押し倒されてる…のか…?
背筋がぞっとする。これが可愛い女の子や色気ムンムンの女の子に押し倒されてるならまだ良かった。でも現実は違うんだ
俺は、男に、しかも同じ職場の男に、押し倒されているんだ
山本さん?と彼を呼ぶ声が少し震えているのが嫌でもわかる
「や、山本さん…冗談はよし子さんです、よ…?」
「冗談でこんな事すると思ってるの?」
「っ…!ややや山本さんはそういう趣味をお持ちで…?」
「それは代沢くんも同じでしょ?」
ドクンと心臓が跳ねる。脳裏に浮かんだのは白蔵さんだ
山本さんの顔が近づいてくる。抵抗しなきゃ、と思うのに体は言う事を聞かずに動いてくれない。ギュッと目を閉じれば山本さんの笑った声が聞こえ唇に柔らかい感触がした
柔らかくて、なんかあったかくて。
…………そういえば俺、これがファーストキスだ
……………
「夢なら覚めろおおおおおおおおおお!!!!!」
ガバリと体を勢い良く起こし目をカッと開く
そこにはいたはずの山本さんや、やりかけのゲームは無く、俺はベッドの上だった
肩からはフェイスタオルが力なく垂れ下がっている。嫌な予感がする…
もしかして俺…ファーストキスどころか童貞まで食われたんじゃ…!?
血の気が引いていく。確認するもの…何か確かに記録が残っている物は…!!
俺はベッドから飛び出してテレビの下のゲーム置き場からやっていたはずのゲームを取り出す
これでクリアしていたら夢じゃなく現実だ、クリアしてないなら夢だ
俺はゲームがクリアされてない事を強く願いながらボタンをカチカチと忙しなく連打する。それはもうコントローラーが壊れそうなぐらいに。
オープニングムービーをスキップし、データ2を見る。なぜに2にデータを作ったかというと、とそんなことはどうでもいい
テレビ画面に表示されているプレイデータには、クリアの星マークは無かった
ホッと無意識に止めていた息を吐き出す。体の力が抜けて手からコントローラーが滑り落ちる。
「ゆ…夢で良かった…」
ゲームの電源を消した。ふと時間の事が気になった。今日は確か平日…?
恐る恐る机の上に置いてある時計を見ると、再び血の気が引いていく
「う、うわああああ!?ち、遅刻!!!」
俺は急いで家を出る準備をする
これは、俺、代沢啓太と職場の仲間たちの愉快で慌ただしく、ちょっぴりホモ要素のある、日常風景の物語だ
1話完
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